「愛宕山」

 
あらすじ 幇間(たいこもち)の一八と繁八、大阪ミナミのお茶屋をしくじって京の祇園町で働いている。室町あたりの旦那のお供で舞妓らとともに春の野駆けだ。鴨川を渡り、二条城を後にし、野辺で蝶々を追いながら、わいわいがやがや。旦那は愛宕山(あたごやま)へ参るという。

 さて愛宕山の麓まで来ると一八と繁八は「こんな低い山」と見栄を張って、弁当などの荷物を全部持つハメになる。京の人間は山行きに慣れていて、舞妓は下駄ばきで、裾をからげて器用に上って行く。

 はじめは威勢よく、「梅は咲いたか・・・」なんて鼻歌混じりで登っていた一八と繁八だが、すぐにバテバテで、一八が荷物を持ち、繁八が一八の尻を突きながらなんとか茶店へたどり着く。弁当を広げると尻突きのせいで中は目茶苦茶。

 旦那は茶店でカワラケを買って、谷の的に当てるかわらけ投げを始める。まずは「天人の舞」で的中。次は「お染久松の比翼投げ」で2枚を見事に的中させる。一八が投げてもうまく飛ばせない。負け惜しみに「京の人間はしみったれやさかい、カワラケみたいなもん放って喜んでんねんや、大阪では金を放るんや」と放言。

 すると旦那は小判を投げ始め、「これがほんまの散財というやつや」と20枚全部投げてしまった。あわてた一八、「小判拾いに行きまへんのか、人が拾いまっせ」、旦那「拾うた者のもんや」。どうしても小判が欲しい一八、茶店の婆さんに谷までの道を聞くと3里半、熊か狼の出る道という。

 あきらめ切れない一八、茶店にあった大きな傘をさして、清水の舞台から飛び降りるつもりで、谷まで飛ぼうとしたがなかなか踏ん切りがつかない。見かねた旦那が繁八に後ろから背を押すように言う。繁八がとーんと押すと、落下で谷に落下して気絶した一八、上からの「大丈夫か、けがはないか」で我に返り、「小判はあるか」で思いだし、夢中で小判を全部拾い集める。

 旦那が上から「それ、みんなお前にやるぞ!」

一八 「おおきに、ありがと」

旦那 「どうして上る」で、はたと困った一八、上からは無情にも、「オオカミに喰われてしまえ」だ。しばし考えた一八、着物を全部脱いで裂いて縄をより出した。上で見ていた者は一八は頭がおかしくなったと思っている。

 すると一八はこしらえた縄の先に石を結び、ビューンと投げて近くの嵯峨竹の先端にからませ、ぐんぐんと引いて竹をしならせ、竹の反動を利用してヒョーイと飛び上がって無事帰還した。

一八 「旦那さん、ただいま」

旦那 「みな見たか、上がって来おったがな。で、小判は」

一八 「ああ〜・・・・」


        



桂米朝の『愛宕山【YouTube】




江戸自慢三十六興 飛鳥山投土器





祇園花見小路
一八と繁八が働いていた所。旦那の住んでいた室町あたりは
花の御所」跡の近くか。



かわらけ投げ(雨降山大山寺)
正面の輪が的  『大山街道


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