「甘井羊羹・綿医者」

 
あらすじ 田舎から大坂に出て来た医者の山井羊仙甘い物が大好きなので甘井羊羹と名前を変えた。隣の町内の医者が挨拶にと訪ねて来たので家族を紹介する。

羊羹 「これが妻のさと(砂糖)で、こちらがせがれの甘蔵、娘のお蜜は尼(甘)にいたしました」

客人 「それで今はどちらに」

羊羹 「尼崎の尼寺におります」

客人 「では、まだご修業中で?」

羊羹 「いえ、あんもち(庵持ち、餡持ち)です」、話に花を咲かせていると町内の長屋の喜六が青い顔して飛び込んで来た。

喜六 「胸がむかついて、腹も痛くて我慢でけへんので・・・」、羊羹先生、喜六の腹をつまんだり、押したりしていたが、

羊羹 「なんでこんなになるまで放っておいたんや。五臓六腑が滅茶苦茶になっとるがな」

喜六 「先生、なんとかしておくれ・・・」、今にも泣き出しそうだ。

羊羹 「このままでは治すことができん。一ぺんはらわたを全部取り出してからゆっくりと治そう」、荒療治が得意な?先生、喜六に薬を飲ませて内臓を吐かせて、その代わりに綿を詰めた。すると不思議、

喜六 「お腹ん中、軽うなって痛みも止まりましたがな」

羊羹 「そうだろ、この汚いはらわた全部治しておくから明日また来なさい」

喜六 「酒飲んで、飯食うてもかまわんでっしゃろか?」

羊羹 「かまへん、かまへん、酒は綿にしみて、飯は綿の上に溜まるだけや。どうせ明日全部出してしまうよって」

 喜んだ喜六は、「ありがとさん」と礼を言って長屋に戻り、清八を誘って居酒屋へ行ってたらふく飲んで食って大満腹で大満足。腹ごなしにと煙草に火をつけてゆっくりと大きく吸い込んだ。

 煙を吐き出すとボォ~ッと火柱が立ち上った。向いに座っていた清八、びっくりして、「火事だ!火事だ!」、店の中にいた連中もこの声にびっくりして、「火事!、どこが火事だ!」

喜六 「胸(棟)が焼けた」

 


    



667(2018・2月)




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