「百人一首(陽成院・小町・六歌仙)


 
あらすじ 横町の隠居から在原業平の百人一首の、「千早ぶる・・・」の歌の珍解釈、迷解釈を聞いた金さん。よせばいいのにまた陽成院の歌、「筑波嶺の峰より落つる男女川(みなのがわ) 恋ひぞ積もりて淵となりぬる」の意味を聞きに来た。

 暇をもてあましていたところへ飛び込んで来た獲物に隠居はニコニコ顔で、
隠居 「いつも人にばかり聞いていないで、少しは自分で考えたらどうだ」

金さん 「あっしも考えたんで。正月に子どもたちが羽根つきをして遊んでいたんだが、みんなへたくそで、つく羽根(筑波ね)がみな野川落ちてまって、泳いでいたの背中の上に乗って積もってブチ(淵)のような模様になってしまったってえのはどうです?」

隠居 「そんな出たらめを言うもんじゃないよ。この歌も千早ぶると同じで相撲取りの歌だよ。京都の陽成院という寺で御前相撲があったな。筑波嶺男女川という力士が勝ち残って対戦した。男女川は筑波嶺に投げられてあっけなく土俵の高いから下に落ちてしまった。見物していた公家さんたちはわっとをあげ、ご覧になっていた天皇が筑波嶺に扶持米を賜ったので、筑波嶺の峰より落つる男女川 こひ(声)ぞ積もりてふち(扶持)となりぬる、どうだこんなやさしい歌は百人一首でも珍しかろうに」、どっちも出たらめだが。

金さん 「へえ、なるほどねえ、・・・最後のぬるってのはなんなんで?」

隠居 「相変わらずしつこいね、お前は。筑波嶺はもらった扶持米を売った金で、洛中洛外の小町香を買い集めて、おかみさんや娘やお妾さんなりにベタベタ塗ったんだ。だからなりぬるだよ」

金さん 「小町香の小町ってのは小野小町ですかい?」

隠居 「そうだ、百人一首の花の色は移りにけりな・・・」の歌ぐらいはお前でも知っているだろう。小町は絶世の美人で言い寄って来る男も多かったな」

金さん 「あぁ、そんならあっしも知っていますよ。どさくさの中将なんて間抜け野郎がふられて死んじまったとか」

隠居 「どさくさではない。深草の少将だ。小町のもとに百夜通いの満願の大雪の日に、凍えて死んでしまって契りを結べなかったという哀れな男だよ」

金さん 「うちの親父も通いましたよ。便所へ三十六たび、とうとう中でうん(運)が尽きてお果てになっちまった」

隠居 「汚いねえ、お前の話は、物の哀れというものが全くないじゃないか」

 どこでも、いつの世でも美人はもてるようで、小野小町を除いた六歌仙が集まって、小町の話をしている。

業平 「小町は目がいいね。あの目で見つめられるとぞくぞくして震えがきちまうぜ。おれはあの目に惚れたね」

大友黒主 「おれはやぱっり口だね。あの色っぽい唇を見ていると、思わず吸いつきたくなってしまうぜ」

喜撰法師 「愚僧は鼻ですな。あのつんとした鼻で、ふんと軽くあしらわれた時には修行の身とは申せ自分を押さえられなくなってしまいそうで、いやはや、色即是空空即是色・・・」

文屋康秀 「目鼻口なんぞの顔の一部じゃなく、顔全体がいいんですよ。どこにも非の打ち所がないじゃありませんか」、さて最後の僧正遍照が小町のなにを褒めるのかと思っていると、遍照さん席を立って出て行こうとする。

業平 「これこれ、どこへ行くのじゃ」

遍照 「小便行て来るよって、わいの褒め所を一つ残しておいてくんろ」


  
陽成院・筑波嶺?・僧正遍照

茨城県筑波郡(現・つくば市)出身の男女ノ川という相撲力士がいた。

六歌仙のうち大友黒主の歌は百人一首に入っていない。「積恋雪関扉」では天下を狙う謀反人として登場して小町桜の精と争う。落語『関の扉

小野小町ゆかりの地は『洒落小町』記載



つくば道から筑波山(左が男体山(871m)、右が女体山(877m))

筑波山・つくば道


男体山山頂から女体山



筑波山(江戸名所百景の隅田川水神の森真崎の一部)


        

668(2018・2)




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