「阿弥陀池」  

 
★あらすじ
 訪ねてきた友達は新聞を読まないと言うので、からかうことにする。
男 「世間では阿弥陀池と言っている尼寺和光寺に盗人が入ったのを知っているか。新聞に出ている話や」

友達 「知りまへんは」

男 「夜中にピストルを持った盗人が入って金を出せと尼さんにつきつけたんや。尼さんは胸を指し、日露の戦いで夫、山本大尉がここを撃たれて戦死したように自分も同じ所を撃たれて死にたいと言うと、盗人は土下座して、自分は山本大尉の部下で、命の恩人とも言うべき人です。その奥さんの所へ盗みに入るとはなんたる仕業と言ってピストルで自分のこめかみを撃とうとした。それを尼さんが止め、死ぬにはおよばない、誰かにそそのかされて来たのだろう、誰が行けと言ったのかと問うと、盗人は阿弥陀が行け(池)と言いました。どうや、ようできている話やろ」

友達 「一生懸命聞いているのに、ようそんなことを言うな、あんた」

男 「新聞読んでいたら、そんな馬鹿にされることもないねん。そんならこの町内の米屋に盗人が入って抵抗した米屋の親父の首をあいくちでかき落とし、ぬかの桶の中に放り込んで逃げていまだにつかまらん。お前、こんな話聞いたか」

友達 「いや聞かん」

男 「聞かぬ(効かぬ)はずや、ぬかに首(釘)やがな」という具合でまたかつがれる。

 馬鹿にされ、くやしくてむかついくる友達。今度はだれかをかつごうと知人の家に行き失敗。これではおさまりがつかない。

 次ぎに入った見知らぬ家で米屋に盗人の入った話をする。裏の米屋に盗人が入り米屋の若い奉公人が殺され、首をかき落された話になってしまう。話を信じ驚いたこの家の主人、その奉公人は女房の実の弟だといい、田舎に電報を打ちに行こうとする。

 あわてて、今のは嘘だと言い「ぬかに首(釘)」と言って皆で笑おうと思ってしたことで、別に悪気があったのではないと謝るが、主人はかんかんに怒って、

主人 「何をぬかしてけつかんねん、このアホ。洒落や冗談で人が死んだとか殺されたとか言うもんやないぞ。・・・ははあ、お前、そりゃあ一人の知恵ではなかろうが。誰ぞが行けと言うたんやろ。」

 「それやったら、阿弥陀が行け、言うた」

            

 

桂米朝の『阿弥陀池【YouTube】


   和光寺 《地図
   阿弥陀池
(和光寺境内)
 撮影:2006年5月8日

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