★あらすじ 大晦日に三両の金の工面ができずにかみさんから、「豆腐の角に頭をぶつけて死んでおしまい」と罵られ、家を飛び出した男。夜寒の町をすきっ腹をかかえて歩いていると、蔵のある商家の裏木戸が開いている。
ぶっそうだから教えてあげようと中に入ると、祝い事でもあったのか座敷には酒と料理が片づけられずに残っている。背に腹は代えられないと男はがつがつと飲み食いし始める。
酒の勢いでだんだん大胆になってきた男は、「酒飲めばいつか心も春めいて借金取り(鳥)もうぐいすの声」、なんて都々逸なんか歌いながら一人酒盛りで盛り上がっている。
そのうちにすっかり酔って火鉢につまづき、防火の物置用に床下に掘ってある穴蔵へ落ちてしまった。座敷に戻って来たこの家の旦那、穴蔵の底で男が「まだ、何も盗っていないのに、こんなところに突き落したのは誰だ!」、なんてわめきちらしているのでびっくり、孫の誕生日の祝の席なので、縄付きを出すのは縁起が悪いと鳶の頭(かしら)を呼びにやる。
勇んでやって来た頭は「二の腕に上り龍と下り龍、背中に般若(はんにゃ)の入れ墨だ」と自慢し、逃がしてしまって惜しいことをしたなんて、泥棒はもう逃げたものと思い込んでいるが、穴蔵からまだ出て来ないと聞いた途端に尻込みしだした。それでも「下りて行ってふん捕まえるぞ」と空威張りだが、泥棒は「下りて来てみろ、ふくらはぎを食いちぎってやる」と牙をむいている。
逆襲のセリフにたじたじの頭に、旦那は「一両やるから」とせかす。少しは元気づいた頭は「一両下さると仰る。下りて行くぞ」に、泥棒は「股ぐらにぶら下がって、グルっと回って引きちぎるぞ」と凄いことを言っている。また怖気づいた頭に旦那は二両やると値を上げた。
今度は下りて行くと思いきや、頭は「一両やるから上がって来い」と、せこい譲歩案を提示した。泥棒は「両足をつかんで股をピィーと裂いてやるから下りて来い」と、提案を真向(まっこう)から拒否。あくまで徹底抗戦の構えだ。頭はすっかり弱気になって旦那に「あっしはご免こうむって」とすっかり逃げ腰になった。
困った旦那が「じゃあ、三両やるから」、三両に勢いづいた頭、「三両下さるから、下りて行くぞ」
泥棒 「なに三両くれる、下りてくんな。三両なら俺の方からから上がって行く」
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