「仏師屋盗人」


 
あらすじ 「十両盗めば首が飛ぶ」と言われた頃の噺です。
真夜中に仏師屋の表の戸を、ベリバリ、ボリバリ、バリバリ、ボリバリ・・・と、無理やりこじ開けようとする音がする。仏師屋はうるさくて寝ていられずに、中から開けると見知らぬ男が立っている。仏師屋が誰かと聞くと盗人と言うが、どう見てもまともな盗人には見えず、暗がりでうろついている盗人に灯りをつけさせ仏師屋は落ち着いたものだ。盗人は「腰の二尺八寸ダテには差さんわい」、と居直るが見ると一尺八寸しかない、「嘘つきは盗人の始まりや」と逆襲され盗人も立場がない。

 全然怖がらない仏師屋に盗人は張り合いがないから怖がれと変な注文を出すが、「コワイコワイ、コワイコワイ、コ ワイコワイ」、「 あ〜れぇ〜、ぬすびと様、こわい、こわい〜」と、完全に舐められ切っている。商売に切り替えようと「銭を出せ」と脅したが、仏師屋は煙草を切らしたので吸わせてくれという。人がいいのか、馬鹿なのか盗人は印伝の鹿の皮の煙草入れから煙草を出して、銀の煙管(きせる)で吸わせてくれた。美味い美味いと二服も吸った仏師屋は仕事場の引き出しから一両二分だけ持って行ってくれと言って、ちゃっかりと煙草入れは懐に入れてしまう盗人顔負けのやり口だ。

 一両二分入り、やっと仕事を終えた盗人は表から出ればいいものを、何故か仕事場の奥の障子を開けた。すると目の前を大入道が塞いでいる。 思わず刀を抜いて切りかかると、何か下に落ちてゴロッゴロッと転がった。なんと仏師屋が大和の寺から首の落ちた賓頭盧(びんづる)さんを預って継いだ首を切り落としてしまっただのだ。さっき盗人にやった一両二分はその修理賃なのだ。

 怒った仏師屋は首を継げるのを盗人に手伝わせる。七輪に火をおこし、鍋でニカワが沸いたら起せと命令し、仏師屋はひと眠りしてしまった。さてニカワも沸き用意も整って盗人から起された仏師屋は、盗人をこき使って賓頭盧さんの首を継いだ。

 もう盗人に用はない仏師屋は、「早いこと一両二分持って去(い)ね」と追い払うが、盗人は一両二分を返すと言う。

仏師屋 「お前、銭盗りに来たんやろ、持って帰れ。俺も男や、いっぺん出し たもん戻されへんねん」

盗人 「一両二分返しまさかい、頼み聞いてもらえまへんやろか?」

仏師屋 「どんな頼みやねん?」

盗人 「いずれ、わたいが盗人して捕まった時にね、親方来てもらえまへんやろか?」

仏師屋 「何で俺がお前とこ行かんならんねん?」

盗人 「捕まって首落とされたら、継いでもらいたいんですわ」




      
       賓頭盧像(大阪府三津寺



桂南光の『仏師屋盗人【YouTube】


   賓頭盧像(普門庵) 《地図

正面の扉の隙間からのぞいたら、目の前にこのリアルな石像が坐っていてギョっとした。

盗人も暗がりでいきなりこんな像に出くわせばさぞかし驚いたことだろう。

東海道(箱根の坂)
   印傳屋

「印伝」とは印度から伝来したという、鹿皮に漆で模様をつけた革の伝統工芸品。天正10年(1582)に上原勇七が独自の技法で印傳屋を創業した。店内を冷かして見る。手頃な値段の皮製の小物もあるが、やはり「かわず飛び出す」だった。
鹿の皮の煙草入れを持っている盗人の方がずっと金持ちだ。
甲州街道(甲府柳町宿→韮崎宿)』






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