「大神宮」


 
あらすじ 昔、浅草雷門の左手に磯辺大神宮があった。弁天山暮れ六ツがなると雷門が閉まるので、吉原通いの連中はみんなここの境内を通り抜けて行った。待ち合わせた連中がのろけ話、振られた話、遊女の噂話、見世を冷やかして歩いた話などを大声で話している。

 これをいつも聞かされている大神宮、「女郎買いは面白そうだ。ちょっと冷やかしにでも行って見よう」と、一人で吉原へ出掛けた。なるほどこれは話に聞いたことと違わず面白い所だ。一度、見世に上がって遊んでみたいと思うようになった。

 一人では心細いので誰かを誘うと考えていると、ちょうど黒い羽織で粋ななりをした門跡さん(阿弥陀如来)が通り掛かった。大神宮が吉原に遊びに行こうと誘うと、はじめはそんな悪所なんぞは御免とお高く止っていたが、いろいろと面白そうなことを話すと、スケベ根性を出した門跡さん、すっかり乗り気になってすぐに行こうということになった。

 大神宮は唐桟(とうざん)の対、茶献上の帯という姿に着替えて、二人で大門をくぐった。大神宮は耳学問と実地見分しているのでなかなか詳しい。目をつけていた花魁を見立てて、二人で見世に上がって芸者をあげて飲めや歌えで騒いで大いに盛り上がって大満足だ。

 お引けとなって初会なので若い衆(し)が勘定をもらいに来た。若い衆は唐桟づくめの大神宮を商家の旦那、黒羽織で丸坊主でぺらぺらとよく喋る門跡さんを取り巻きの幇間医者と思って勘定書を回して、

若い衆 「どうかおつとめを一つ願いとう存じます・・・」、すると門跡さんは何でこんな所でと思ったものの、そこは商売、心得たり、お安い御用と湯呑みを火箸でチーンと叩いて、「なみあみだ・・・・」

若い衆 「これはおからかいで恐れ入ります。お払いを願いとう存じますので・・・」

門跡さん 「ああ、お祓いは大神宮さんへ行きなさい」



    





磯辺大神宮(左下)・雷門(右上)


雷門(右端)の左の屋根に千木があるのが磯辺大神宮



弁天山の時の鐘

「花の雲 鐘は上野か 浅草か」(芭蕉)



東本願寺(浅草1丁目)
門跡様」の名がある。『阿弥陀如来像』(都重文)



吉原大門


        

602(2017・12)




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