「団子兵衛」
★あらすじ 七代目市川団十郎の弟子で、下回り役者の団子兵衛。毎晩芝居のハネが遅く、その後も何やかやと雑用があっていつも帰りが遅くなる。
長屋では不審者の侵入防止や火の用心のため、四つには木戸を閉めるので、仕方なく大家を起こして開けてもらうので申しわけなくもあり、肩身が狭い思いをしている。
大家の方も度重なって寝不足になり、もう我慢ができないと店立てを考え始めた。それを近所の噂話から知った団子兵衛は、菓子折りを持って大家を訪ねる。
団子兵衛 「おかげさまで、師匠の団十郎と共演できる役者に出世いたしました。もう今までのように帰りが遅くなることもありません」、これを聞いた大家は大喜び。
けちで堅物な大家だが、団十郎と共演するという団子兵衛を見たくなって芝居小屋に出掛ける。出し物は「清玄桜姫物」で、むろん大家はどんな筋なのかも知らないが、きっと団十郎相手の役回りで出て来るものと期待して、目を凝らして見ているが団子兵衛は一向に舞台に姿を現わさない。
舞台では桜姫に恋慕した清玄が桜姫を手籠めにしようとして、桜姫に仕える奴の淀平に殺される。しかし清玄は死んでなお桜姫に執着し幽霊となって現れる(庵室の場)。
淀平が花道にかかると斬られ役の雲助が出て来る。それが待ってましたの団子兵衛だ。さあ、縦横無尽の太刀回りかと思いきや、団子兵衛さん、すぐに淀平に投げ飛ばされて四つん這いになり、背中に足を乗せられて踏みつけられてしまった。ひょいと目を上げると、舞台そばの客席にいた大家と目が合ってしまった。
大家 「おや、団子兵衛さん。どうしたそんな不様なかっこうをして」
団子兵衛 「大家さん、今夜も木戸をお願いします」
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芝居町繁盛之図
「猿若町」
清玄の霊桜姫を慕ふの図(「新形三十六怪撰」)
七代目市川團十郎銘の成田山道標(右端・天保2年(1831)) 《地図》
天保の改革のあおりを受けて、一時成田山新勝寺に蟄居していたことがある。
左側面と裏面には、この清水(加賀清水・『成田街道③』)を飲めば、
子どもを授かるという意味のことが書かれているそうだ。
ここにあった林屋という茶屋が、この清水の茶を成田山参詣客に振舞っていたという。
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