「狸娘」
★あらすじ 猿若町の芝居小屋で枡席を借り切って、男二人で芝居を楽しんでいる。そこへ若い衆が、「ご婦人のお二人連れですが、ちょいと相席を願えませんでしょうか」
女二人なら異存はない、連れておいでというと、入って来たのが二十一、二の極上なお嬢さんと、三十一、二のお付きの女中。
男のほうはしめしめと鼻の下を伸ばして、芝居なんぞはそっちのけで、菓子や弁当を勧めたりの大忙し。芝居が終わると、
女中 「今日はまことにありがとうございました。実はお名前は申し上げられませんが、狸穴(まみあな)のしかるべきお屋敷のお嬢様です。よろしければお礼にどこかでご飯でもご一緒に・・・」
男二人は願ったり叶ったりで花屋敷の常盤屋へ。酒も入って打ち解けてきた頃、
女中 「今日はだいぶ遅くなってしまい、お嬢様も少し酔ってしまわれたご様子なので、わたしたちは亀沢町のお屋敷の寮に泊まります。どうかお二人もご一緒にいらっしゃいませ」
女二人は身づくろいのため部屋から出て行った。男どもは残っている酒と料理をもったいないとがっついて食っている。なかなか女たちが戻ってこないので帳場へ下りて見る。女たちはどうしたのか聞くと、
帳場 「さきほど車を呼んでお帰りになりました」
男 「勘定は払って行ったんだろうな」
帳場 「いいえ、まだでございます。二階の連れのお方からいただくようにと・・・」、さては食い逃げされたかと仕方なく勘定を払おうとしたが、財布もなくなっている。してやられたかと地団太踏んで悔しがっていると、手が回って女たちは捕まったという。
帳場 「なんでも、さっきの女は大変なワルで、狸穴の狸娘のおきんというお尋ね者だそうで・・・」
男 「狸娘か、道理で尻尾を出しやがった」
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「猿かわ町よるの景」
「猿若町」
浅草花やしき
「花屋敷」(「写真の中の明治・大正」)
「奥山花屋敷」
「浅草奥山」
花やしき通り
狸穴坂(麻布台2-1と麻布狸穴町の間を北東に上る) 《地図》
ロシア大使館(写真右)の西側に沿う坂。
坂下に狸(まみ・雌狸、ムササビ、アナグマ)の穴があった。
採鉱の穴という説もある。『観光マップみなと』
葛飾北斎生誕地(墨田区亀沢2丁目の北斎通り)
北斎通りには南割下水が流れていた。
『北斎ゆかりの地マップ』
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