「縁切り榎」


 
あらすじ 元旗本の次男の梨原平也は三十五歳にして今だ独り身。醜男で女にもてないのでも、女嫌いでもない。二人の女から惚れられて、どちらを嫁に取るかで悩んでいるのだ。

 一人は柳橋の芸者の小糸、もう一人は武家の娘のお里で、性格も顔かたちも随分と違っているがどちらとも別れがたく決められずに迷っている。

 平也は二人の気持ちを試そうと、「よんどころない事情で、西国へ旅立つこととなった。二、三年、悪くすると五、六年帰れないかも知れない。その間、そなたにわたしの帰りを待たせるのは偲びない。どうかいい縁談、好きと思う男ができたら嫁いでくれ」。

 だが、二人とも何年かかろうと帰って来るまで待つという返事。困った平也は知り合いの刀屋の近江屋に相談する。近江屋は、「中山道は板橋宿縁切り榎というのがございます。その木の皮を削って、縁を切りたい相手に飲ませれば、すっぱりと縁が切れると言います。板橋へ三行半の礼参りとも言われますゆえ、一度、二人に飲ませて効き目を試して見る価値はあろうかと・・・」。

平也 「二人に飲ませれば二人とも縁が切れてしまうではないか」

近江屋 「あなたが心底では切れたくないと思っている方には効き目は薄いと思いますが」

 早速、平也は板橋へ行って縁切り榎の皮を削っていると、すぐに小糸、続いてお里も来て鉢合わせ。
平也「そうか、他の女との仲をさいて自分がわたしの女房になれるようにとやって参ったのか」

お糸・お里 「いいえ、あなとの縁を切りたくて参りました」




      

縁切り榎
十代将軍家治、十二代家慶に降嫁の行列は、
ここを避けて根村道を通ったが二人とも若死した。
縁切榎の名は高まり、その樹皮を煎じて飲めば男女の縁が切れる
という俗信が生じ、榎の皮を粉にして売る者まであったという。
皇女和宮の降嫁の時には榎全体を菰で覆った。



板橋 《地図
ここから岩の坂を(縁切坂・いやの坂)を上った環七通りあたりまでが、
中山道板橋宿の上宿。「説明板

板橋


石神井川と板橋






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