★あらすじ 「碁仇は憎さも憎しなつかしし」、「下手の考え休むに似たり」、「凝っては思案に能わず」、どの格言にもピッタリの、ザル碁だが碁仇の二人、いつも煙草を吸いながら碁に夢中になるので、あちこちに焼け焦げだらけで、火の用心にも悪いとおかみさんから苦情が出る。
それなら碁を一局打った後で、別の部屋で煙草を頭がクラクラ、ケツからヤニが出るほど吸えばいいということにして対戦開始だ。ところが碁に夢中になってくると、そんな約束事など頭から消えてしまい、「煙草の火が来てないぞ」と言い出す始末だ。
困ったおかみさんが一計を案じ、煙草盆に真っ赤なカラスウリを入れて持って来た。二人とも碁に夢中で、火がついていない煙草をスパスパやりながら夢中で碁を打っている。これなら火を出す心配はないと、おかみさんは風呂に入る。
その隙に入り込んだのが二人に輪を掛けた碁狂いの泥棒だ。大きな風呂敷包みを抱えて失礼しようとすると、奥から聞こえて来た、「パチリ、パチリ」の響きのいい音。泥棒は磁石に引かれるように碁石の音のする方へ引き寄せられてしまった。
大きな風呂敷をかついだまま、碁を観戦し始めた泥棒、二人あまりのヘボさに黙ってはいられなくなり、あれこれと口出しし始めた。やっと誰かそばで助言がましいことを言っているのに気がついた二人は、
碁仇甲 「うるさいなあ、一体おまえは誰だい」と一手打った。
碁仇乙 「それでは私もおまえは誰だい、と」、一手打つと、
泥棒 「へい、泥棒で」
碁仇 「ふーん、泥棒、泥棒さん、よくおいでだね、と」、(また一手打った)
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