「後家殺し」


 
あらすじ 浄瑠璃好きの職人の常吉、質屋の伊勢屋の後家の前で「三十三間堂由来平太郎住家の段」を語ったことが縁でいい仲になり、今年で三年目。

 女房も後家との仲を認めて万事順調だが、友達の中にはやっかむ奴もいる。いたずら半分に「後家にはこの頃、お前のほかに荒井屋の板前で喜助といういい男ができた」と吹き込んだ。

 始めはそんなことあるはずはないと笑い飛ばしていた常吉だが、だんだんと不安になって来る。後家の最近の様子や、細かい事柄が気になって来て疑心暗鬼がつのるばかり。

 ついには思い余って後家を、「よくもてめえは俺の顔に泥を塗りゃあがったな」と、出刃包丁でめった刺しで殺してしまった。

 すぐに友達の言ったことは根も葉もない絵空事と分かって後悔したがもう後の祭り。すぐに召し捕られて奉行所のお白洲に引き出され打ち首と決まった。

奉行 「何か言い残したいことはないか」

常吉 「へい、お慈悲のお言葉ありがとう存じます。私の心残りはたった一つ、あとに残りし女房子が、(浄瑠璃の節となって)打ち首とぉー聞くぅーなぁらぁばぁーさこそ嘆かんー・・・不憫やぁ・・・とぉ・・・」

奉行が膝を叩いて、「後家殺し!」(上方での浄瑠璃の褒め言葉)


   



        




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