「人俵(ひとびょう)」
★あらすじ 友達から今晩、吉原へ遊びに行こうと誘われた吉兵衛。あいにく金の持ち合わせがない。明日になれば金の入る当てがあるのだが、友達も立て替えてくれるほど金を持っちゃいない。
そこでやりくり算段の上手な吉兵衛は何かいい方策をと考えて、近所の顔見知りにお菰さんに、
吉兵衛 「楽な仕事で一晩で五百文稼がせてやるが、どうだ一つ話に乗っちゃみねえか」
お菰さん 「そんなおいしい話には罠があるから引っ掛かりゃしませんが・・・どんな仕事で?」
吉兵衛 「米俵に入(へえ)ってもらって一晩、米屋の店の中で寝ていりゃいいだけだよ。明日の朝になったら俺が米俵をもらい出しに行って、表へ出てお前さんが米俵から出た所で五百文渡す。それでお終いよ」
お菰さん 「必ず明日の朝には迎えに来てくれるんですね」、という事で交渉は成立、吉兵衛はお菰さんを米俵に入ってもらい、米屋へ運んで行って、
吉兵衛 「どうしても今晩二両入り用になったんだが、あいにくと金がねえんだ。この米俵をカタに二両ほど貸してもれえてんだが」
米屋 「そりゃあ、かまいませんがその米俵はいつ取りに来るんです?」
吉兵衛 「明日の朝、金が入ることになっているんだ。そしたら二両返しに来て米俵は持って帰(けえ)るよ」で、二両持って吉兵衛は吉原に行ってしまった。
一方の米屋の土間に置かれた米俵の中のお菰さん、土間は静かで米俵の中は暖かくて気持ちがよく、ぐっすりと寝てしまった。
すると真夜中に二人組の泥棒が入って来て、お菰さんの入っている米俵を棒を差してかつぎ出した。揺られて目を覚まして、
お菰さん 「おや、明日の朝という約束でしたが、たいそう早かったですね。ありがてえ」、びっくりした後棒をかついでいた泥棒、「おい、こりゃ人(しと)だぜ!」
先棒の泥棒 「四斗なら二斗づつ分けよう」
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