「法華長屋」


 
あらすじ 下谷の長屋の大家の嘉兵衛は大の法華信者。家族全員はもとより、日蓮宗の者でなければ長屋を貸さない。長屋へ入って来る商人などもみな日蓮宗の者ばかり。ふだんの会話なども日蓮宗から離れない。

八百屋 「ええ、祖師大根や祖師大根」

おかみさん 「ちょいと八百屋さん、なんみょうほうれん草はないかい」

八百屋 「ええ、二把残っております」

おかみさん 「いくらだね」

八百屋 「三十番神で」

おかみさん 「高いねえ。品第十六文におまけよ」、こんな調子だ。

 ある時、この長屋へ葛西から下肥を汲みに来る次郎兵衛が、しばらく来なくなった。長屋一同は困って往来を通るオワイ屋に汲ませようとしたが、大家は他宗の者には汲ませない。

 何人ものオワイ屋が断られるので、オワイ屋仲間でこのことが評判となった。法華宗の者でなければ汲ませないということが分かって、五郎八というオワイ屋が法華信者になりすまして長屋へ汲みに行く。

 すっかり大家に取り入った五郎八は酒、肴のご馳走になる。すっかり酔って下肥を汲んでいるうちによろけて転びそうになって思わず、「ナムアミダブツ」

大家 「こら、お前は他宗の者だな。今よろけた時に南無阿弥陀仏と言ったろう」

五郎八 「なあに、こんな汚え物は他宗に託(かず)けるだよ」


    
日蓮像
金谷山大明寺(衣笠栄町3-77)
        





表紙へ 演目表へ 次頁へ
アクセスカウンター