「本膳」


 
あらすじ ある村の庄屋のせがれの婚礼の席村の連中が招かれた。そこでは本膳料理が振舞われるという。美味い料理を食べられるのは有難いが、本膳の礼儀作法を知っている者などはなく。村人は戦々恐々、仮病で欠席したらどうか、中には夜逃げでもすんべかともめている。

 村人の一人が、「村はずれの手習いの師匠なら元は侍だから、本膳の食い方ぐらい知っているだんべ・・・」ということで、一同うち揃って、師匠の家に教えてもらおうと押し掛けた。何事か、百姓一揆などに襲われる覚えはないと驚いた師匠だが、話を聞いてひと安心。

 師匠「もう今晩のこと。いちいち教えていては間に合わない。拙者も招かれておる故、何でも拙者のするとおりに真似なさい」で、村人も大安心。身支度を整え、師匠とともに庄屋の家に向かった。

 さて、本膳の席となって師匠を筆頭に村人一同が一列に並んだ。段取りどおり、師匠の一挙手一投足を隣の者が真似、それを隣の者が真似て行く。

 初めのうちはこの連携プレイが順調に進んでいたが、師匠が里芋を箸に挟もうとして、すべって里芋がお膳の上に転がった。師匠は箸で里芋を突こうとしたが、またも失敗。里芋は畳の上にコロコロと転がった。

 それを見た隣の村人、本膳なんて奇妙なことをするもんだと思ったが、師匠のやることは絶対に真似ねばと、里芋を挟みお膳に落し、箸で突いて畳に転がした。むろん隣の者も右へ習えで、珍風景がくり広げられる。

 困った師匠が、何をやってんだと、肘で隣の者の横っ腹を突いた。それが次々と続いて、末席にいた者が隣を突こうとするが誰もいない。

村人 「お師匠さま、この肘はどこへやるだんべ」




本膳ではないが
        



柳家小さん(五代目)の『本膳【YouTube】





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