「ふぐ鍋」

 
あらすじ あちこちの温泉を巡って来た大橋さんが、土産を持って世話になっている旦那の所を訪れた。ちょうど、鍋料理で酒を飲み始めようとしていた旦那、「あんたちょっと付き合はへんかい」
大橋さん 「へえ、それではお言葉に甘えまして」と、早速、一杯飲んだ大橋さん、「こらぁ、結構なお酒で、銘柄は何ちゅうまんのや」

旦那 「犬乃盛や。猫乃盛の兄弟酒や。あんた鍋食べなはれ」

大橋さん 「鍋にはちょっと歯が立ちませんで・・・あぁ、さよか、この鍋料理で、・・・中身は何が入って・・・白菜、椎茸、豆腐・・・この間からのぞいているのは何でおます?」

旦那 「テツやがな」、「八幡製鉄所の?」

旦那 「これは・・ぐや、・・んぐ」、「何ですねん」

旦那「ふぐや、ふぐや、てっちりや

大橋さん 「ちょっと用事を思い出しましたので、失礼を・・・」

旦那 「何や、ふぐが怖いのんか」

大橋さん 「昔から、あたらぬがある故 河豚(ふぐ)のこわさかな、ともおつですと言えどふぐには手を出さず”、とも言いまっしゃろ。孫の顔、二、三人見た暁には、なんの心残りもなく頂戴いたします」、ふぐが怖いのは旦那も一緒。誰かに毒味させてから食べようという魂胆だが、あてがはずれて困っていると、

奥さん 「いつものお菰さんが台所へ・・・」、しめたこれだと思った旦那はふぐの毒のありそうな所を選んでお菰さんに分けてやった。旦那は大橋さんに、「あんた、お菰さんの後つけて様子見て来てくれなはれ」、「ほい、がってん」と、表へ行った大橋さん。しばらくすると戻って来て、「大丈夫でんがな。お菰さんはお堂の前で座ったので、町内を一回りして来たらお菰さん、コックリ、コックリと居眠りしてますねん」

旦那 「えっ、そのまま眠り続けたままちゅうことはないやろな」

大橋さん 「いびきかいて、寝言言うとりました。しびれる〜、しびれる〜ちゅうて・・・はっは、嘘です、冗談です」

旦那 「あっそう、じゃあこれ大丈夫やな。ほなら早よ食べよ」、「へぇ、食べまひょ」だが、まだ、「どうぞ、あんたから」、「そういう旦さんから」と、煮え切らず押し付け合っている。「それじゃ、一、二の三で」と、まるで子どもみたいなことを言って、やっと二人はふぐを口の中に入れた。その美味いこと。

 あとは夢中に、我れ先にとふぐをめがけて箸の先陣争いだ。すぐに無くなってあとは雑炊にして満腹、満腹。

 すると奥さんが、「またさっきのお菰さんが来ましたんねん。今度は旦さんに会いたい言うて」
旦那 「ふぐの味しめよってまた来とるんや。追い返してしまいなはれ」、すると庭に回って来たお菰さん「もう、みなお召し上がりなりましたかいのう?」

旦那 「ああ、このとおりすっくり食べてしもうたがな」

お菰さん 「ほな、わたいもゆっくり頂戴いたします」



ふぐのことわざ
 

桂吉弥の『ふぐ鍋【YouTube】



春帆楼(しゅんぱんろう)
ふぐ料理を気に入った伊藤博文が、「ふぐ食用禁止令」を解禁して
「ふぐ料理公許第一号店」となった料亭。
日清戦争の講和会議の舞台ともなった。右側の建物は日清講和記念館。
(『山陽道(長府駅→下関駅)』)






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