★あらすじ 道楽が過ぎて勘当され、柳橋の船宿の大枡の二階に居候の身の徳兵衛が船頭になりたいと言い出す。
親方 「若旦那、あなたみたいな細い体で、船頭なんぞになれやしません」
徳兵衛 「なれやしねえったって、おんなし人間じゃねえか、みんなにやれてなぜ俺にできねえんだ」と食い下がる。親方は船頭の大変さをくどくどと説くが、
徳兵衛 「そうかい、親方のとこが駄目だって言うなら、よそへ行って船頭になるよ」と強情だ。
親方 「若旦那、”竿は三年、艪(ろ)は三月”と言いやすが、本当に辛抱できますか?」、「もちろん、するとも」で、そこまで言うならと親方は承知して船頭たちを呼び、徳さんを船頭仲間へお披露目する。
集まった船頭たちはてっきり親方から小言を食らうと思って戦々恐々、叱られる前に謝ってしまおうと、それぞれの不始末をあれこれと白状するが、全部親方の知らないことばかりでやぶ蛇になってしまう。親方は船頭に”若旦那”の呼び名は似合はないので、これからは「徳」と呼ぶことにすると言って徳さんを船頭の仲間入りをさせる。
今日は、暑い盛りの浅草観音の四万六千日。船頭たちは出払ってしまい、船宿には徳さん一人。そこへなじみの客が、船が嫌いな友達を連れてやって来て大桟橋まで行ってほしいと言う。
船宿のおかみは今日は船頭は出払ってしまっていないと断るが、客は柱に寄りかかって居眠りをしている徳さんを見つける。おかみさんは断り切れずに、徳さんが船を出すことになる。
客を待たせてひげをあたり、舫(もや)ったままで船を出そうとしたり、同じ所を三回も回ったりして、「ここんとこはいつも三度ずつ回ることになってまして・・・」なんて言いながらも、なんとか大川へ船を出した徳さん、土手に知り合いを見つけて、
徳さん 「竹屋のおじさん、大桟橋まで送ってきます」
おじさん 「徳さん一人かぁ〜、大丈夫かぁ〜」なんてやりとりするもんだから、船の嫌いな客は心配する。
徳さん 「この間、赤ん坊連れのおかみさんを川に落としてしまったけど大丈夫だ」
大川に出たは出たが船は石垣の方に寄って行ってしまう。ぴったり石垣にくっついて身動きがとれない。徳さんは客のこうもり傘で石垣を突かせ船は離れたが、こうもり傘が石垣の間に挟まってしまう。もう二度とそこへは着けられないと言われ、客はこうもり傘をあきらめるしかない。
漕ぎ疲れてきた徳さん、暑くて汗が目に入り前が見えない。客に「前から船が来たらよけてください」なんて言い出した。ようやく大桟橋の近くまで来たが、浅瀬に乗り上げてしまった。
徳さんは客にここから土手まで歩いて行ってくれという。仕方なく客が一人を負ぶって川の中を歩き出した。客が船の方を振ると、徳さんはぐったりしている。
客 「おーい、若い衆、大丈夫か」
徳さん 「上がりましたらね、柳橋まで船頭ひとり雇ってください」
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