★あらすじ 長屋で兄(あに)さんと呼ばれている面倒見のいい鳶の頭の所へ、辰さんの女房が大変だと言って駆け込んでくる。仲間の寄合で今夜は遅くなると浜に行った亭主が、早く帰って来たという。
話を聞くと、辰さんを送り出した女房は、ちょうど通りかかった新さんを呼び入れ、茶を飲んで世間話などをしていた。そこへ遅くなるはずの辰がへべれけに酔って帰って来た。やきもち焼きの辰に、留守に若い男を家に入れた現場を見られたら大騒動になると、女房はとっさに新さんを後ろの押し入れに隠した。
辰を寝かしつけてから新さんを逃がそうと思っていたが、辰は押し入れの前にあぐらをかいて座り込んで、酒を飲み始めぐだぐだ言い出しなかなか寝ようとはしない。新さんを押し入れから出せずに困っていると言う。
鳶の頭はまた揉め事を持ち込まれたと迷惑がるが、頼りにしてくれて満更でもない。考えた末、風呂敷を使った新さん脱出作戦を思いつき、辰の女房と一緒に家に行く。なるほど辰さんは、押し入れの前にでんとあぐらをかき、酔っておだを上げている。
鳶の頭は今、長屋の揉め事を一件片づけて来たといい、面白いから話してやると言って、風呂敷を取り出し話し始める。
頭は、「亭主の留守に引っ張り込んだ男と酒を飲んでいる所へ亭主が帰って来て、お前のように押し入れの前に座り込んで動かないので」、と言いながら「こう風呂敷を頭から被せ」と、辰さんの頭に風呂敷を被せ、「見えないだろう」と辰さんに念押しして、押し入れを開け、「出な、出な、と男に言って」と震えている新さんに目配せ、合図して逃がした。「男が逃げたのを見て、亭主の頭からこう風呂敷を取ったという話だ」と言って、辰さんの頭から風呂敷を取った。
辰さん 「あぁそうか、そいつは上手く逃がしやがったな」
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