「ふたなり」


 
あらすじ 夜更けに人がよく面倒見のいい猟師の亀右衛門さんのところに、仲間の若い猟師が二人やって来る。どうしても明日までに十両の借金を返せねばこの村に居られなくなったと言う。あちこちと金の工面して回ったがどうにもならず、亀右衛門さんを頼って来たという。

 亀右衛門さんにも十両のまとまった金はなく、手紙を持って金貸しのお小夜後家の所へ行って借りるようにと取り計らうが、二人はこんな夜更けに狐・狸が化けて出るという天神の森を抜けて行くのは怖く、お小夜後家の所に行ったところで信用がない二人には、貸してくれないだろうと、情けないことを言っている。

 亀右衛門さん「いい若い者が怖い、怖いとは情けねぇ。俺なんぞ怖いと思ったことなど一辺もない・・・」なんて豪語し、「そんなら俺が行ってやる」と、お人良し丸出しでこんな夜中に出掛けて行った。

 天神の森にさしかかり、本当は怖がりの亀右衛門さん、「何でこんなことを引き受けてしまった・・・」と悔やむが引き返すわけにも行かない。すると目の前にすーっと若い娘が現れた。さては狐狸妖怪の類と見構えたが、正真正銘の人間のようだ。

 若い娘は奉公先の番頭といい仲になり、お腹に子まで宿してしまった。店の金を盗んで番頭と駆け落ちしてここまで来たが、番頭は逃げ出してしまった。両親に会わせる顔もなく、ここで首を吊って死のうと思っていると明かす。

 首吊りなんて早まったことはするなと止めにかかった亀右衛門さんに娘は、「ここにある十両をあげるから死なせてくれ」と言い出す。十両と聞いた亀右衛門さん。十両あればこの先、怖い思いをしてお小夜後家の所へ行かずとも済む。

 そこで方針転換、自殺推進派となって首吊りを勧め、やり方が分からないという娘に、懇切丁寧、首吊りの方法を教え始める。「・・・こうやって縄を木の枝に掛け、・・・この桶を踏み台にして・・・こうやって首を縄の輪の中に入れ・・・踏み台をポーンと・・」蹴ってしまった。

 ぶら下がった亀右衛門さんのよだれと鼻汁を垂らした無様な死にざまを見て、娘はすっかり首吊りの気は失せた。両親に宛てた書置きを、こんな物もういらないと亀右衛門さんの懐(ふところ)に入れ、渡した十両を取り戻して、すたこらさっさと駆け出して行ってしまった。

 一方、亀右衛門さんの帰りが遅いのを心配した二人は迎えに出掛ける。まだ夜明け前の天神の森に入ると、何かにぶつかった。よけても押してもすぐに戻って来る。力一杯押したら、戻って来て顎にカウンターを食った。よく見ると木の枝にぶら下がった亀右衛門さんの死体だった。びっくり仰天して二人は役人の所へ走った。

 死体をつぶさに検分した役人は亀右衛門の懐に娘が入れた書置きを見つけた。「私こと、ご両親様に申し分けなきことなれど・・・」、役人「亀右衛門はいくつだ?」、「確か今年78で・・・」、
役人は書置きを読み続ける。「いつしかあの人と深い仲になり、ついには因果の胤(たね)を宿し候・・・、どうもおかしいな、亀右衛門とは男の名。世にふたなりという男と女の両性を有する者もあると聞くが・・・、これ亀右衛門は男子か女子か?」

若い猟師 「いえ、猟師でございます」



 
天神の森?(昼間)
        



古今亭志ん生の『ふたなり【YouTube】




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