「しの字嫌い」


 
あらすじ 飯炊きの権助と二人暮らしの隠居。権助は役に立って重宝しているが、いつも屁理屈をこね、隠居の言うことに揚げ足を取って喜んでいる。「煙草盆に火を入れて持ってきてくれ」と言うと、「煙草盆に火を入れたら燃えるがええか、それを言うなら煙草盆の中の火入れの中の灰の中に火を入れてと言うのが物の道理だんべ」と、こんな調子だ。間違いではないからなお悔しい。

 たまにはこっちから困らせてやろうと画策し権助を呼ぶ。「今日から縁起の悪いの字を言ったらだめだ。もし一回言ったら、一か月分の給金はやらない。二回なら二か月分だ」、権助「でも、おらだけ罰を受けるのは理不尽で納得がいかねぇ」、ごもっともで、隠居「もしも、あたしがしの字を言ったら、何でもお前の望みの物をやる」で、ポンポンと手を打って「しの字禁止合戦」が始まった。

隠居 「おい、権助、水は汲んだか?」

権助「へえ、汲んで・・・、汲み終わった」

隠居は、本家の嫁が器量良しだが尻(しり)が大きいと近所で評判なので、「・・・近所の若え者(もん)がなんと噂している」
権助 「本家の嫁御は器量はええが、尻(けつ)がでけえと・・・」、どっこい権助はそんな手に乗るほどの間抜けではない。そこで隠居は四貫四百四十四文(しかんしひゃくしじゅうしもん)の銭勘定をやらせることにした。座らせて勘定させればきっと、「さしを使わせてくれ、足がしびれた・・・」と言うだろうとの魂胆だ。

隠居 「ちょっとこの銭勘定をやっとくれ」、だが、さしは銭の穴に通す縄、足のしびれは足のよ(四)びれで、罠もどっこい権助は引っかからない。数え終えた

権助 「旦那さま、ちょっくらそろばんを入れてください」と、逆襲に出る。

隠居 「そろばんか、よし」

権助 「二貫とまた二貫、二百とまた二百、二十とまた二十、二文とまた二文、旦那さま、それでいくらだね」

隠居 「権助、お前が言うんだ」

権助 「じゃあ、よん貫、よん百、よん十、よん文」と、なかなか土俵を割らない。ついに、

隠居 「ぶとい奴だ。・・・まった」

権助 「そら言った、おらの勝ちだ、ウッ」で、勇み足の引き分けとなった。




      
        



金原亭馬の助(初代)の『しの字嫌い【YouTube】





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