「犬の目」  柳家小せん(4代目)

 
★あらすじ★ 医者にも様々あります。「藪医者」、藪になる前の「たけのこ医者」、どんな病気にも葛根湯(かっこんとう)を飲ませる「葛根湯医者」、なんでも手遅れにしてしまう「手遅れ医者」。
屋根から落ちてすぐ連れてきたのに手遅れと言う。いつ連れて来たら手遅れにならないのかと聞くと、落ちる前につれて来なければだめだという。

目を患った男が友達から洗井シャボンという目医者を紹介され、治療に行く。
シャボン先生は男の両目をくり抜いて塩酸につける。しばらくして目を洗い、入れようとするが入らない。
どうやら塩酸につけすぎて目がふやけたらしい。
日当たりのいい縁側に干して目が元の大きさになるのを待つ。
先生は浪曲の、お里、沢市「壷坂霊験記」など語りだす余裕だ。

もうよかろうと縁側に目を取りに行くが見当たらない。近くにいたが目を食べてしまったようだ。
それならばとシャボン先生、今度は犬の目をくり抜き、男の眼に入れることにする。うまく合わなければセメントで固定するという。
犬の目がうまくぴったり男に合う。
先生は男に表へ出て電信柱で片足をあげないようにと注意し、静かに目を開けるようにと言う。

男が目を開ける。

 「真っ暗で何も見えないですが」

シャボン先生 「そんなはずはないんだがな、いや失礼、裏返しに入れた」

     


 ★見聞録★ 今年は戌年、犬のつく噺を選びました。この他に、「鴻池の犬」(大どこの犬)、「元犬」がありましたが、一番軽く、たわいもない噺にしました。昭和60年の大晦日のテレビ番組です。
短い噺の中にギャグをふんだんに入れ、小せん独特のとぼけた味で演じていました。

人の目、犬の目をくり抜いたり、塩酸につけたり、セメントで固定しようだのと荒っぽい治療?をする洗(荒の方がふさわしいか)井シャボン先生ですが、聞いていて軽く笑えるところが小せん氏の持ち味、芸風からでしょうか。

落ちはいろいろあるようで、バレ噺風の落ちも『落語事典』に載っていました。
桂米朝は、犬の目を入れた男が2,3日後にシャボン先生の所に来て、万事以前の目より具合がいいが「電信柱を見ると小便がしたくなる」と落としていました。

葛根湯とは、「漢方薬の一.。クズの根を主な材料にし、風などの際に、発汗剤または止瀉(ししゃ)剤(下痢止めの薬)として用いる。」(三省堂大辞林)

壷坂霊験記は、明治時代に作られた浄瑠璃です。
お里の愛情と信心、大和壷坂寺の霊験により沢市の目が開いたという「お目でたい」物語です。

立川文都の『犬の目@』・『犬の目A【YouTube】




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