田舎から東京見物にやって来た吾平さん。浅草の馬道に鏡屋と畳屋が並んでいて、その間に二軒の看板が、「かかみやたたみや」と、一つになって掛かっている。
吾平 「東京には銭取ってかかあを見せる家があるようだ。ここの家は只見せるとあるが、どんなかかあだんべ」と、鏡屋の中を覗くと化粧をした綺麗なおかみさんが座っていた。なるほどいい女だ。吾平「これだから自慢で見せるだな。それも只見せるたあ、えれえこった」と、感心、納得。村に帰ってもこの話ばかり。
翌年も吾平さん、大勢を引き連れて鏡屋の女房を見ようとやって来たが、鏡屋のところは三味線屋になっていて、「ことしゃみせん」(琴三味線)の看板が掛かっている。
吾平 「こりゃあだめだ。ここの家に違げえねえが、断り書きが出ている。今年ゃ見せんと」
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