「亀太夫」
★あらすじ 浅草の淡島様は針仕事の神様として知られ、胴を紐で縛られて、ぶら下げられている亀を買って放してやると、女の子の針仕事が上達するといわれた。
亀という名の職人は、建築の現場などのヨイトマケの名人だ。ある日、家主が頼みごとがあるとやって来た。
家主 「お前さんのヨイトマケの技で病人を一人、助けてもらいたいんだよ」
亀 「あっしは医者じゃねえんですから、そりゃあ無理というもので・・・」
家主 「まあ、話を聞いとくれ。あたしの知り合いの麹町のお屋敷の旦那の具合が悪いんだ。医者がいうには、これという病気はないが、一日中全然動かずに食べちゃ寝てばかりいるので運動不足がいけないというんだ」
亀 「誰か付き添って外へ出て歩かせればいいじゃありませんか」
家主 「もう七十を過ぎているし、太り過ぎてしまって抱えてもとても歩けるような体ではないんだよ。医者は体を宙に浮かせれば血の巡りも良くなるし、筋肉などもほぐれて気分がよくなるだろうというんだ」
亀 「それであっしにその旦那を宙に浮かせてくれというわけですかい。けど、現場の丸太なんかじゃない生身の人間なんてえのは・・・」
家主 「まあ、こんなことを言っちゃなんだけど、お前さんがいつも扱っている丸太や資材と思ってやったらどうかい」と、731部隊の人体実験のマルタ(丸太)ような口ぶりだ。
亀 「そこまでおっしゃるなら一度やって見ましょうか。あっしは現場の丸太でもぞんざいな扱いをしたことなどはありゃしませんので、ご安心を」、ということで、亀さんはオランダ医学を学んだ亀太夫ということにして麹町の屋敷に乗り込んだ。
寝ている旦那の身体の胴回りなどを縄で巻いて、亀さんが隣の部屋で縄を引っ張って身体を浮かせるという段取りだ。これが上手くいって、旦那は気持ちよさそうに宙に浮いて大喜びだ。
亀さんは縄で調節してだんだんと高い所まで浮かせて、ゆらゆらと揺らしてやったりすると、旦那はまるで宇宙遊泳を楽しんでいるようだ。
何日か経つうちにすっかり慣れて来た亀さんは縄を身体に巻き付け、酒を飲みながらやるようになった。そのうちに酔って来て、コックリ、コックリ、前後左右に揺れてきた。そのつど縄もあちこちに力がかかって引っ張られるので旦那の身体も大きく揺れ出した。
旦那は気持ちいいどころか、宇宙酔いしてしまって縄を引っ張って、もう止めるように伝えようとするが、亀さんは畳に横になって寝てしまった。高く宙づりしされた旦那は、胴中を縛られて売られている放し亀のように手足をばたつかせて叫び始めた。
旦那 「おい、亀太夫、亀放せ、亀放せ!放し亀!」
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「深川萬年橋」の一部(名所江戸百景)
小名木川の河口の隅田川
橋の欄干に置かれた手桶の柄の部分に紐で吊り下げられて売られている亀。
買った亀を下の川辺まで行って、紐をほどいて逃がしてやる放生会用の放し亀
『放生会』(江戸散策)
萬年橋(小名木川)から隅田川 《地図》
正面は清州橋、富士山は見えない。
淡島堂
買った亀を放生して針仕事の上達を祈願したのだろう。
2月8日は「針供養会」で終日賑わうそうだ。
昭和57年(1982)和服裁縫教師の方々により建立。
箱根山(44.6m) 「説明板」 箱根山の地面の下には陸軍戸山学校時代の銃弾が多数埋まっているそうだ。
戦時中、細菌戦の人体実験を行っていたとされる731部隊との関連が噂され、
都内有数の心霊スポットとか。この落語とはまったく関係ないが。
『鎌倉街道(中の道②』
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