★あらすじ 熊さんの家の二階に居候の若旦那、おかみさんに迷惑がられ、”居候三杯目にはそっと出し”どころではなく、一杯目からぶつぶつ嫌味を言われて肩身が狭い。とても鬼瓦のような顔のおかみさんでは”居候亭主の留守にし候”なんて気分にもなれず、こっちから願い下げだ。
熊さんは若旦那に退屈しのぎ、暇つぶしにと紙屑屋の選り分けの働き口を世話する。屑を選り分け、出て来たものは珊瑚の五分珠でもダイヤモンドでもお札でももらっていいという。楽で実入りもありそうだし、若旦那は紹介状を持って浮かれながら紙屑屋へ。
紙屑屋は人手がなく困っていたところなので、もう誰でも構わない。すぐに屑の選別の仕方を教える。
紙屑屋 「綺麗な白紙はこちらの籠、汚れたカラス紙はこちら、煙草の空き箱はセンコウ紙でここ、ミカンの皮は陳皮と言って唐辛子や薬の使い道があるのでこの籠へ、髪の毛はかもじや人形の髪になるのでここの籠に入れてください。こんな風に調子をよく、♪白紙は白紙~、カラスはカラス~、センコウ紙はセンコウ紙~、陳皮は陳皮~、毛は毛~♪、とやってください」、
早速、若旦那も「♪白紙は白紙~・・・」と選り分けを始めた。すぐに珊瑚の五分珠をゲットと思ったら梅干しの種。都々逸の本が出て来て開けると、
”一生懸命走っちゃみたが・・・”、好きな人のもとへ走って行く一途な女心の歌かと思えば、”やっぱり電車にゃかなわない”で、興ざめ。
”向こうのひさしにブリがぶら下がっているよ、これがほんとの久しぶり”なんて洒落にもならない。
”向こうのタライに鴨が一羽、こちらのタライにも鴨が一羽、互いに見かわすカモとカモ”、なんていい加減にして欲しいねまったく。
”破れたフンドシ宝の山よ、あちらとこちらに金が見え”、見たくもない、想像するのもいやだね。
”橋の上からびり糞たれりゃ、下の魚は卵とじ”、臭い!臭って来るよ、勘弁してよ。
”膝枕・・・”おっと、やっとまともなのが出て来たよ。”膝枕させてあたりをそっと見て包丁つきつけ金を出せ”、どうもまともな感覚じゃないね。
”わたしゃお前に火事場の纏(まとい)・・・振られながらも熱くなる~”、出た~!出ました!本日の秀逸~、」
紙屑屋 「そこで宴会の稽古はいけませんよぉ」
若旦那 「白紙は白紙~・・・おぉ、ダイヤモンド・・・ドアの取っ手か・・・おや珍しい、ハーモニカだよ・・・汚い入歯でした。おや手紙が出て来ましたよ。なになに、”ひと筆示し上げ参らせ候。 御前さまのお姿を一と目、ミツバより、どうしてインゲン、ササギやら・・・(野菜尽くしと洒落たね)・・・スイカお方と思い初め、湯島なるニンジン様にトウガン掛け、叶う月日もナガイモや、マツタケ辛きものはナシ。
あたしゃ、お前に首っタケノコのホーレンソウ、寝ても覚めてもお姿が、目につくイモやレンコンの何のヘチマと思わずに、どうかナスビのシイタケまで、ウドウド、ネギあげ、参らせ候。 エンドウ豆太郎様へ 恋するジャガたらおイネより”」、浮かれの屑よりでした。
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