★あらすじ 今日も若い連中がサイコロのチョボイチ博打を開帳しているが、胴元が損をし、儲けた奴が先に帰ってしまって場が盛り上がらない。そこへ顔を出した今は隠居の老親分に、場の流れを変えて景気づけてもらおうと胴を取ってくれと頼む。
老親分は、「四十二の時に博打をやめてから長くはなるが、お前たちが相手なら赤子の手をひねるようものだ。壺皿の中が勝負だぞ」、と言って壺皿にサイコロを入れて振り、畳の上にポンと伏せた。
見ると、壺皿からサイコロが飛び出し一の目(ピン)が出ているが、老親分は一向に気がつかず、「さあ、張って見ろ」と悠然と煙草をふかしている。これを見た賭場の連中で、サイコロが壺皿からこぼれましたと注意する奴などはなく、さすがの老親分ももうろくしたか、ここがチャンス到来、負けを取り戻そうと皆、一に張る。「張らなきゃ損損」と、中には有り金全部、金を借りてまで張る奴もいるがっつきようだ。
全員が張り終わるのを横目で確認した老親分は、「壺皿の中が勝負だぞ、看板のこのピンは、こっちへしまっておいて・・・・俺が見るところ、中は三だな」と、連中が口をあんぐりと唖然とする前で壺皿を開けた。壺皿の中にもちゃんとサイコロが、それも老親分の言った通りの三だ。
すっからかんになった連中だが、泣くに泣けないでいると、老親分「博打というものは場を朽ちらせるものだ。これに懲りたら博打はやめろ」と格好いいセリフを言い、金を全部返して立ち去った。
これで懲りたと思いきや、そう簡単には懲りない面々だ。懲りるどころか俺も今の手を使って一儲けしようと、別の賭場へ行った留公、「俺は、博打は四十二の時に止めた」
賭場の仲間 「てめえ、まだ二十六じゃねえか」、留公はむりやり胴を取ると、わざとサイコロをこぼしすと一が出た。
留公 「さあ、張んな。みんな一か。じゃぁ、看板のピンは、こっちへしまっておいて」
賭場の仲間 「おぉ〜、おい、ピンは看板か」
留公 「俺が見るところ、中は三だな。てめぇら三下野郎はこれに懲りたらもう博打なんかするんじゃねぇ」と偉そうに言って、壺皿を開けると、
留公 「・・・・あぁっ、中もピンだ」
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