「堪忍袋」
★あらすじ 今日も長屋の熊五郎の家では夫婦喧嘩だ。「このスベタアマ、蹴殺すぞ」、「何言ってやがる、スケベ野郎のオケラ野郎」、と女房のお松さんもブルドックみたいな顔で、大きな口を開けて噛みつこうとしている。
そこへ通り掛かった表の旦那がまたかと仲裁に入る。旦那は、「昔、唐土のある人が、人前ではいつも笑い顔しか見せない。友達連中が何とか怒せようと、料亭に招いて辱めたが、何を言われても相変わらずニコニコしている。そのうちの男は中座して帰宅して大きな瓶(かめ)の中に怒りと屈辱を怒鳴り込んで蓋をした。
友達連中が男の家に様子を見に行くと、ニコニコ顔で厚くもてなされた。それからというもの、あの人は人間が出来ていると評判になり、信用もついて出世してついには大金持ちになった」との故事を話す。そしてお松さんに、瓶の代りに袋を縫わせ堪忍袋とし、ひもを堪忍袋の緒として、気に入らないことや悪口を袋の中に怒鳴り込ませ、ひもで袋の口を縛るようにさせた。
早速、熊さんが、「亭主を亭主と思わないスベタアマ〜」、次にお松さんが、「このスケベ野郎、オケラ野郎、しみったれのイタチ野郎〜、・・・」と言いたい放題に怒鳴り込んだ。隣の家で将棋を指していた連中が、あまりうるさいので吉さんを仲裁に派遣する。熊さんの家に来ると、二人とも涼しい顔でお茶なんか飲んでいて喧嘩の気配は微塵もない。
変だなと思いながら帰ると、すぐに二人の悪口を言い合い怒鳴る声だ。また行って見ると、二人はお茶でも飲んで行けと笑っている。狐につままれたような顔ををしている吉さんに、熊さんは堪忍袋のことを話すと、吉さんも貸してくれと言い、女房への不満を怒鳴り込んですっきりした顔で帰って行った。
たちまち堪忍袋は大評判となり、俺にも、あたしにもやらせろで不満分子が来るは来るはの大盛況。そのうちに袋はパンパンに膨れ上り、パンク寸前の状態となった。
誰か借りに来ると困るからと戸を閉めようとした所へ、のんべえの寅さん、人呼んでグズ寅がへべれけに酔ってやって来た。竹さんと喧嘩してやり込められて口惜しいから、堪忍袋を貸してくれと言う。
熊さんは、もう満杯で明日、空にしたら貸してやるからと断るが、寅さんは「宵越しの喧嘩なんか聞いたことがねえ」と、袋を引っ張り出した。熊さんも引っ張り返すと、堪忍袋の緒が切れて、中から溜っていたのがいっぺんにあふれ出し、
「△×?■○☆ДИ◆‖・・・・・・・」
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△×?■
○☆ДИ◆‖
★三遊亭金馬(三代目)の『堪忍袋』【YouTube】
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