「狸の札」


 
あらすじ 昼間、子どもたちからいじめられた子狸を助けた八五郎の所に子狸が礼に来る。親狸から助けられた恩返しをしないのは人間にも劣る狸の道にももとることだと諭されて来たという。お礼をして帰らなければ勘当になると言う。翌日に越後縮み屋が四円五十銭の勘定を取りに来るので、一円札五枚に化けてくれと頼むと、一人?一役で、五枚は無理だから、五円札に化けると言う。むろんOKでその晩は子狸は土間で自分の四畳半に包まって寝た。

 翌朝、子狸は五円札に化けると、大き過ぎたり、小さ過ぎたり、裏に毛が生えていたりしたが、なんとか見事な新品の五円札に化けることに成功した。ただし、折り曲げたり、畳んだり、回転させることは厳禁、頭と尻も天地無用と、注文がつくが。

 お札をお膳の上に寝かせ準備万端で待ち構えている所へ縮み屋がやって来た。新品の五円札で勘定全部を払い、つり銭もいらないというから、びっくりだが文句はない。縮み屋は八五郎からお札の取り扱い注意事項を厳しく言われて帰って行った。

 八五郎は子狸のおかげで勘定が支払えたことを喜ぶが、子狸がこのまま親元から離れ、越後に連れて行かれてしまうのかと思うと複雑な心持ちだ。すると子狸が駆け込んできた。外へ出た縮み屋は、八五郎がこんな大金を持っているのを不審に思って、にせ札かも知れないとお日様に透かして見たりして、まぶしくてくしゃみが出そうになった。やっと縮み屋は本物のお札と納得して、小さく折りたたんでがま口に入れた。苦しくてしょうがないので、ガマ口の底を食い破って逃げ出して来たと言う。

八五郎 「そうか、よく帰って来たな」

子狸 「へぇ、ついでにがま口の中に、五円札が三枚あったから、お土産に持って参りました」


           






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