★あらすじ いつもの居酒屋で看板まで粘り、吠えられたのら犬に説教し、いつものとおり酔っぱらって家へ帰って来た男。
自分の家の戸を叩き、大声で「松本留五郎さんのお宅はこちらですか」と叫んでいる。近所迷惑なので女房が留五郎を引っ張り込む。昨日は「聖徳太子さんのお宅はこちらですか」で、おとといは「坂上田村麻呂さん・・・・」で帰って来たのだ。
女房は「寝なはれ、寝なはれ」だが、留五郎は酒を持って来いだ。仕方なく持って来た酒を飲み始めた留五郎は「何かつまむ物」を催促する。女房は「何もない、鼻でもつまんだら」とつれない。「コォコの美味いのあったろ」に、女房は「あれみな、わて食てしもた」。留五郎は「いただきました」と女言葉を使えと説教だ。「貝の佃煮」、「するめ」、「目刺し」も「あの〜」も、「いただきました」で残っているのは「冷や飯」だけだと。怒る留五郎に「茶瓶のフタつまみなはれ」ときた。
留五郎は角のおでん屋に買いに行かせる。もう女房はいないと思って、「顔見たらいつもバカって言ってるが、あれで細かいとこに気がつくしありがたい女房だ。腹の中ではいつも”すみません、ありがとございます”と手を合わせているんだ」と元帳を吐露する。ところが女房はまだ家の中にいて全部聞かれてしまい、一生の不覚だ。
外で「うど〜んえ〜、うど〜ん〜」の声、留五郎はうどん屋を家に呼び込みお燗をさせ、うどん屋にも無理に一杯飲ませ、友達の左官の留三郎の娘の婚礼の話を始める。商売を邪魔され、しょうもない長話しに商売上がったりのうどん屋は家から脱出する。
留五郎は「行たらいかん。お〜い、ちょっ と待て、行たらいかん、お〜い泥棒〜盗人、逮捕するぞ〜!」なんてわめいている。そこへおでんを買った女房が帰って来た。うどん屋に酒のお燗をさせただけで、うどんを食べていないと聞いて気の毒に思い、自分が食べると言い、
女房 「うどん屋さ〜ん、うどん屋さ〜ん」
通行人 「おい、うどん屋、呼んでるで」
うどん屋 「呼んでるて、どこです?」
通行人 「向こぉの家やないかい」
うどん屋 「えぇどこの〜、だぁはぁ〜、向こぉへは行けま へん」
通行人 「何で?」
うどん屋 「 いま時分行たら、ちょうど銚子の替わり目でございます」
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