★あらすじ 船場の大店の道楽者の若旦那、お花という娘を見初めた。嫁にもらってくれればお茶屋遊びもやめるというので、お花の親元に頼み込み嫁入りさせたが、ひと月もしないうちに若旦那の悪い虫が目を醒まし、また茶屋遊びが始まった。
可哀そうなのはお花さん、乞われて嫁に来たのに放って置かれ、心労から病いとなり、里方へ養生に出る。大旦那は一度も見舞いにも行かない若旦那に意見するが、「飽き性なのは親譲り、あんさんもお寺に日参する代わりに、堀江の立花通りから大きな仏壇を買って来て、ひと月位は外にも出ず家で拝んでいたが、飽きてまたあちこち寺参りに出かけるようになった」と、茶屋遊びと寺参りを一緒にして、しゃあしゃあとしている。
そのうちにお花の親元から病状が急変したとの知らせ。冷たい若旦那に代わって、大旦那が定吉を伴に見舞いに行く。番頭にけっしてせがれを外に出さないようにとの厳命する。
チャンス到来と北の新地の菊江という芸妓といい仲になっている若旦那は出掛けようとするが番頭に止められる。若旦那は番頭が帳面をどがちゃがしてごまかし、淀屋小路に女まで囲っていることをすっぱ抜いて迫った。
困った番頭、大旦那との約束も破るわけには行かず、菊江をこの家に呼ぶことを提案、若旦那も納得、菊江を手紙で呼び出すことにし、どうせなら「鬼の居ぬ間に洗濯」と、奉公人も好きな物を注文しろと勝手な大盤振る舞いとなる。
恐る恐る堅気の大家へやって来た菊江を呼び入れ、大広間の部屋をぶち抜き、奉公人一同と飲めや歌え、三味線に丼鉢の太鼓で乱痴気踊りのどんちゃん騒ぎの大宴会が始まった。番頭はすっかり若旦那の太鼓持ちになって座を取り持っている。
そこへ、今夜は帰らないはずの大旦那が帰って来て、一同大あわての大騒動だ。とにかく菊江をどこかに隠さなければと、若旦那は大きな仏壇に菊江を押し込めた。
乱痴気騒ぎの宴の後の散々たるの現場を情けなさそうに見た大旦那は、お花の臨終の様子を語り奥の仏間へ。これから通夜に行くから親鸞さんのありがたいお姿を持って行くと仏壇を開ける。中には消え入るような白の帷子(かたびら)の菊江の立ち姿が・・・
大旦那 「あぁ〜、お花、迷うて出たか、無理もない。せがれは、きつく意見して、必ずや真人間にさすよってに、どうぞ迷わず消えてくだされ」
菊江 「わたしも消えとうございます」
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