「紀州飛脚」

 
あらすじ 左右の足と同じくらいの逸物の持ち主。こうなると自慢のタネどころか邪魔で困ったことの方が多い。ある日、船場の大店の主人から岸和田まで飛脚代わりに手紙を届けてくれと頼まれる。こんな男に頼む方も、頼まれる方もおかしな話だが落語だから仕方がない。

 男は手紙を持って紀州街道を南に、何をブラブラとリズムよく調子を取りながら岸和田を目指して行く。快調に進んで堺を過ぎて一休み。石津川の土手の草むらへ小便をジャージャージャー、何が馬並以上だから量も多い。

 これが草むらで気持ちよさそうに昼寝をしていた子狐にひっかかった。びっくりした子狐、夕立でも来たかと思いきや、ホースから勢いよく放水される小便で、あわや土手を転げ落ち、川に中に転落寸前、おまけに自慢の毛並みも目茶苦茶。

子狐 「おのれ、お稲荷の使いたる狐に、このような不浄をかけおって。今に見よ、思い知らさん」と、親分狐のところへ駆けつけた。親分狐は紀伊の国、音無川の水上、船玉山の船玉稲荷大明神の筋を引こうという紀州の首領(どん)狐だ。

 子狐から話を聞いた親分狐「憎っくき飛脚め、・・・帰り道を色仕掛けで捕まえて引きずり込もう。・・・御殿をこしらえてな、わしがお姫様に化ける。子狐、お前はわしの股ぐらに隠れて、わし(姫)のアソコに化んのや。閨(ねや)に飛脚を引っ張り込むさかい、口で食い切ってしまえ」

子狐 「なるほど、小便の仇やさかい、その元を食い切りまんのやな」
親分狐 「目には目を、歯には歯を、じゃ」、さあ、親分狐の手下狐は、御殿を作ったり、奴(やっこ)や腰元に化けたりして大忙し。準備万端整って後は飛脚の帰りを待つのみ。

 日の暮れ方に岸和田で手紙を届けた飛脚がやって来た。見張りが腰元に伝達、「・・・もうし、そこの飛脚さん。お姫さまのお待ちかね。ちょっとこちらへ」
飛脚(男) 「わてのことかいな。こんなところにいつの間に立派な御殿が・・・」、人違いかとも思ったが、面白そうで遠慮することもないと御殿の中へ。座敷の御簾(みす)の中には綺麗なお姫さまとは真っ赤な偽り、見事に化けた親分狐が、「早よ、近う、早よ、近う・・・さあ、妾(わらわ)を抱いてたも」と、手招きしている。

飛脚 「・・・わしがそんなにもてるはずないのやがな。・・・ええ、据え膳食わぬわ何とやら、もうこうなったら後には引けんわ」と、お姫さんをかき抱いて突入を図る。姫の股ぐらでは子狐が食い切ってやろうと口を開けて待っている。

飛脚 「・・・おかしいな、大概あれは縦に裂けているもんやが、横に裂けてるがな。まあ、何でもええわ」と、稀代の逸物で突撃した。子狐は噛み切るどころか、あごがはずれ、息もできなくなってその苦しいこと。ついに、

小狐 「あぁー、死ぬ、死ぬー」


 
    
  



音無川 『熊野古道(中辺地C)』
上流に親分狐ゆかりの船玉神社、玉姫稲荷がある。


船玉神社・玉姫稲荷
鎮座地を玉滝山といい、小さな玉滝・音無の滝があったという。
滝は明治22年の大水害で埋まってしまったそうだ。
並んでいる玉姫稲荷(写真右)は、船玉神と夫婦神という。



石津川・阪堺電車 『紀州街道@



岸和田城


岸和田城下の町並み






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