「狐つき」(熊沢蕃山)


 
あらすじ 熊沢蕃山は若い頃に私塾を開いていた。塾生の若侍が十七になるが憑いたから落としてくださいという。

若侍 「祈祷師やら山伏に狐の調伏を頼んでみましたが、狐は一向に落ちません。狐は妹の口を借りて、”わしを学問の力でねじ伏せるような者があれば落ちてやる”と言って、誰がどんなことを聞いてもすらすらと答えてしまいます」

 早速、蕃山は若侍の家に行き、妹に乗り移った狐と対面して、難問から珍問、愚問、はては謎々のような問題まで出して聞いて行くが、娘はにこやかにすらすらと何でもすぐに答えてしまう。

 さあ、蕃山先生、行き詰ってしまったようだが、
蕃山 「それでは論語のうちに”子曰く”という言葉はいくつあるか?」と問うた。しばらくすると娘の目尻が吊り上がり、顔が引きつってきて、口が裂け、おでこから脂汗がたらたらと流れ出した。すると娘はバタッと前に倒れ、何かが身体から抜けて行ったようだった。狐が答えられずに降参して落ちたのだ。

 家族の者は大喜びで、
若侍 「先生、ありがとうございます。私も論語は人一倍読みましたが、”子曰く”というのがいくつあるかまでは数えたことがありません。一体いくつあるんですか?」

蕃山 「わしも知らないのだ」

若侍 「なぜ、知らないことを狐に問うたのですか?」

蕃山 「狐というものは、つねに人のを知るということからキツネという名がついたという。それゆえ相手の腹を探ってすぐに答えを知ってしまうのだ。そこで自分でも知らないことを聞いてみたのだ。狐はわしの腹をいくら探っても答えが見つからず、分らないので降参して妹さんの身体がら去って行ったというわけだ」

若侍 「あの狐は逃げ出しただけで、まだ死んでいませんから、また妹の身体に取り憑きに来やしませんか?」

蕃山 「その心配は無用じゃ。さっきの狐はもう、コンコン(来ぬ来ぬ)と鳴いて行った」






岡山城
別名を烏城(うじょう)・金烏城(きんうじょう)

牛窓往来①


沢の池(後楽園



旭川から岡山城



古河城本丸跡 『古河市の坂
渡良瀬川は幾度も改変されている。
ここは今は河岸の利根・渡良瀬サイクリングコースで、
正面は新三国橋。その先で利根川に合流する。

熊沢蕃山は晩年は下総古河藩に預けられていた。


        

609(2017・12)




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