「九郎蔵狐」


 
あらすじ 昔、浅茅ヶ原に悪い狐が出て、通行人の睾丸を蹴って目を回す隙に、食物をさらったり、人に化けて旅人や村人をたぶらかしていた。

 そのうちにこの性悪狐の噂が広まり、浅茅ヶ原を通る人がなくなった。すると、九郎蔵という百姓が、「とんでもねえ畜生だ。おれが退治してやる」と、馬を引いて浅茅ヶ原に行き、鎌で草を刈るふりをして、四方八方に目を配っていると、大きな狐が現れた。

 九郎蔵は草むらに隠れて見ていると、狐は若い娘に化けて、九郎蔵の馬の糞を拾って重箱の中に入れてすたすたと村の方へと歩き出した。あとを追うと、なんと狐は九郎蔵の家の前で止まった。

 狐は九郎蔵のになりすまして家に入って、
姪(狐) 「伯母さん、今日家でこしらえた牡丹餅を持ってきました。どうか召し上がってください」、戸の節穴から覗いている九郎蔵は気が気でない。

女房 「まあ、それはありがとう。おじさんが帰って来たら一緒に食べさせていただくよ。でも、折角だから一つだけお先に食べようかしら・・・」、女房が箸を取って馬糞を口に入れようとしている。

 九郎蔵が慌てて戸をドンドン叩いて、「そりゃ馬糞だぞ、食っちゃだめだ」と叫んだ途端に、ポ~ンと睾丸を蹴られて目を回してしまった。

 しばらくたって気がついた九郎蔵があたりを見回すと、自分の家ではなく、さっきの浅茅ヶ原に倒れていたのだ。

九郎蔵 「はて、狐めはどこから出て来ておらのキンタマを蹴ったんだべえ」、よくよく考えてみると、狐に蹴られたのではなく、自分の引いて来た馬に蹴られたのだった。

 九郎蔵は浅茅が原で草を刈っている時から狐に化かされていたのだ。自分の家の戸の節穴から覗いていたと思っていたのは、馬の尻の穴を覗いていたのだ。馬の尻を戸と思って叩いたので馬に蹴られて目回してしまったという馬鹿(化)げたお噺。



    

落語『源九郎狐



浅茅ヶ原の(新)姥ケ池(花川戸公園) 「説明板」 《地図

浅茅ヶ原の鬼婆・石枕」伝説は『廻国雑記』にも記されている。

「つみとがのくつる世もなき石枕 さこそは重き思ひなるらめ」

「人めさへかれてさびしき夕まぐれ 浅茅か原の霜を分けつつ」



        

610(2017・12)




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