「子ほめ」


 
あらすじ 隠居の家へ松ちゃんが、「ただの酒を飲ませてくれと」やって来た。芳さんから「灘の酒」と聞き間違っているのだ。
隠居はただで酒を飲ませてもらうには、お世辞、べんちゃらの一つも言わないとあかんという。
それでもだめなら、奥の手を出せばいいという。相手の歳を聞いて、それより若く見えると言うのだ。45歳なら、「どう見ても(42)そこそこ」、「50なら47.8」・・・・「100なら95.6」とこんな調子だ。
子どもの場合には反対に歳を余計に、「10歳ですか? しっかりしたはりますなぁ、どお見ても12、3歳には見えま す」と言わなあかん。 赤子の誉め方は、「さて、これがあんさんのお子さんでございますか。どおりで目元から鼻筋にかけてはお父さん、口元から あごのあたりにかけてはお母さんそっくり、額の広い所なんかは亡くなったお爺さんに似て長命の相がございます。栴檀は双葉より芳し、蛇は寸にしてその武威を顕わす、私もこういうお子さんに、あぁ〜、あやかりたいあやかりたい」 とこんな具合だと教わり、松ちゃんは早速、人体実験すべく隠居の家を飛び出す。

すぐに見知らぬ人に声を掛け失敗、次に伊勢屋の番頭にばったりと出くわし声を掛けると、番頭から「よぉ、町内の色男」と機先を制される。隠居から教わったお世辞とべんちゃらで攻めるが失敗し、奥の手の歳を聞く。番頭の「今年40だ」の想定外の歳に困った松ちゃん、無理に番頭に「45だ」と言わせて、「どう見ても厄そこそこ」と言って、番頭は怒って行ってしまいただ酒どころではない。大人はあかんこうなら子どもだ、竹やんの所に生まれた赤子を誉めに行くことにする。

竹やんは早速赤子を見に来てくれたのには嬉しいが、なにせ松ちゃんのこと不安でもあるが奥へ通す。案の定、松ちゃんは昼寝をしているお爺さんを赤ん坊と間違え、「随分と大きい、産まれたてのくせに頭がはげて歯が抜けて皺だらけだ・・・・」なんて言っている。赤ん坊のそばに座った松ちゃん、「猿みたいやなぁ、赤い顔して、これ茹でたんか」ときた。「可愛らしぃ 手やなぁ、もみじみたいやなぁ」で始めてまともなことを言い竹やんも嬉しがる。すると、「こんな可愛らしぃ手して、近所から祝い取りよった」で台無しだ。

竹やんの「うまいこと褒めてくれ。一杯でも二杯でも飲ませるから」に、松ちゃんは仕込みの誉め言葉を並べ始めたが、「さて、・・・・額の広いところなんかは亡くなったお爺さんそっくり・・・・」とすぐに脱線だ。
でも松ちゃんの「お人形さんみたいやなぁ」の一言に、竹やん「もぉ 何にも言ぃな、”人形さんみたい”か、嬉しいこと言うてくれた」と喜ぶが、松ちゃん「何や知らんけど、お腹押さえたら”キュッキュッ”いうてるで」でぶち壊しだ。
こうなれば最後の奥の手を出すしかない。
松ちゃん 「あんさん、お歳はおいくつで」

竹やん 「幾つも何も、今朝産まれたとこやがな」

松ちゃん 「今朝産まれたとこ? とはお若こう見える」

竹やん 「アホなこと言ぅな、産まれたてより若かったらどやっちゅうねん?」

松ちゃん 「どぉ見ても、まだ産まれてないみたいや」


       



桂枝雀の『子ほめ【YouTube】





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