「九日十日・味噌豆」


 
あらすじ 虎ノ門金刀比羅宮近くの商家での小僧さんのお噺。定吉が店番をしていると、立派なお武家さんが入って来た。

武士 「ちと物を尋ねるが金比羅さんの縁日は何時であったかの?」

定吉 「へぇ、確か五日六日でございます」

武士 「おおそうか、かたじけない。礼を言うぞ」

番頭 「今のお客さんはどうしたんだ?」

定吉 「今のはお客じゃないんです。金比羅山の縁日は何時かって聞かれました」

番頭 「それでお前は何と答えたんだ」

定吉 「五日、六日と教えました」

番頭 「しっかりしなさい、縁日は九日、十日だ。追いかけて行って教えて来なさい」

定吉 「でもお客じゃないんで・・・、何も買ってないんですよ」

番頭 「間違ったことを言ったから謝って正しいことを教えてくるんだ。それが人の道というものだ」、珍しく落語に出て来るような番頭さんでない。しぶしぶながら定吉はさっきの侍を追いかけたが、人混みの中、名前も知らなくて弱っていたが大声で、

定吉 「お~い、さっきの五、六日の旦那~、五日、六日の人~・・・」、気が付いた武士が振り向いて、

武士 「七、八日(何か用か)」

定吉 「へい、九日、十日」、見事役目を果たした定吉が店に戻ると、

番頭 「さっきのお方は見つかったのか?」

定吉 「へい、見つけて九日、十日と伝えて来ました」

番頭 「そうか、それはご苦労。店番はいいから台所で味噌豆の煮え加減を見て来なさい」、定吉は喜んで台所へ行っていい匂いの漂ってる大鍋の蓋を取って、

定吉 「煮えてるかどうか、食べて見なけりゃわからない」と、一つつまんで口の中へ。その美味い事。こうなるともうやめられない、止まらない。

 そこへ様子を見に来た番頭、「だれがつまみ食いしろと言った。ここはもういいから三河屋さんへ使いに行っておくれ」と、追い立てられてしまった。

 番頭も味噌豆の香りの誘惑に勝てずに、むしゃむしゃと食べはじめ、
番頭 「こんなところを定吉に見つかれば、何を言われるかわかったもんじゃない」と、味噌豆をごっそりと持って(かわや)に隠れて食べ始めた。

 使いから帰って来た定吉、番頭の姿が見えないので味噌豆をつまみ食いするチャンス到来だが、また番頭に見つかってはこっぴどく小言を食らっていまう。定吉も味噌豆を持って厠へ直行だ。戸を開けると番頭が味噌豆を食べている。

番頭 「定吉、何しに来た!」

定吉 「へえ、お替わりを持ってきました」


    



金刀比羅宮
9日・10日が九日祭・十日祭(月次祭)


        

694(2018・3)




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