「仔猫」

 
あらすじ 船場の大きな問屋に口入屋の紹介でお鍋という田舎のぶさいくな女が奉公に来る。お鍋は見た目はひどい顔でも誰にでも親切で、細かい所にも気がつき、力仕事も男に負けない働き者で、店の者にすっかり気に入られるようになる。

 ある日、店の若い衆がお鍋の話で盛り上がっていると、誰かがお鍋には怪しい所があると言い出す。夜になると、薄気味悪い形相でどこかへ出て行き、朝になったらちゃんと戻っているというのだ。番頭も夜中にお鍋の部屋の灯りがついているので心配して障子の隙間から覗いたら、鏡を見ていたお鍋の髪はザンバラ、口は耳元まで裂け血がべっとり、目は吊り上り、恨めしそうに「ヒィヒィヒィ」と気味悪く笑っていたと言う。

  主人
もこの事にはうすうす気が付いていたので、番頭を呼びお鍋に暇を取らせる相談をする。とにかく何か証拠を押さえようと、お鍋にご寮人(ごりょう)さんの芝居見物のお伴をさせた隙に、お鍋の荷物を調べる。すると押し入れの行李の中から、血に染まったの毛皮が何枚も出てくる。

 主人から命じられた番頭は、いろいろと口実をつけてお鍋を暇を取らせ田舎に帰らせようとするが、お鍋は留守中に部屋の中を調べられたと感づき、「わしの留守中、何か見はせなんだか」と詰め寄る。

 血染めの猫の皮を見られたと知ったお鍋は(芝居がかって)、「・・・・・七つの時に飼い猫が足を噛まれて帰ったを、舐めてやったが始まりで、猫の生き血の味を覚え、それからというものは、人様の可愛がる猫と見れば、捕って喰らうがわしの病い・・・・」と打ち明け、「わし、ここを追い出されてもどっこも行くところありゃせんのじゃ。番頭さん、今日限り止めます。手足縛って寝まするで、番頭さん、どうぞここに置いとぉくれ」と訴えた。

番頭 「何じゃお前、猫捕るだけの話かいな。わしゃ喉笛をガブッとかぶりつかれるかと思てたんやがな、ハハハ、ハハハ・・・・、 因果なもんやなぁ、昼間あんなに朗らかなあんたが・・・・、猫被ってたんやなぁ」



桂米朝の『仔猫【YouTube】


猫娘列車(JR境線

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