「誉田屋」

 
あらすじ 京都三条室町の呉服商の誉田屋(こんだや)の一人娘、今小町と近所で評判のお花が原因不明の病気になる。医者もサジを投げ、もう長くは持つまいと言う。両親が何か望みはないか尋ねると、お花は「四条新町の糝粉屋(しんこや)新兵衛の団子が食べたい」、容易いことと買って食べさせると、「おいしい、おいしい」と二つ食べ、三つ目を食べかけたところで、喉に詰まらせ死んでしまった。

 両親は、お花の死体を焼くのは忍びないと、晴着を着せきれいに化粧し、三百両の金と一緒に土中に埋めた。手代の久七は天下の通用金を埋めると罪になる、もし見てる人がいて訴えられたら旦那さんが捕らえられると、墓返しをする。

 三百両を取り出そうと、お花の死体を動かすと喉につかえていた団子が取れて、お花は息を吹き返した。びっくりして久七、「御両親はさぞかしお喜びになるでしょう。さあ帰りましょう」、お花は「一度は死んだ身、帰ったら世間ではあの娘はよみがえり者と言うでしょう。どうか久七あたしを連れて逃げておくれ・・・・」、二人は三百両を持って手に手を取って江戸へ向かった。

 一方の両親、一人娘に先立たれ店を続けて行く気力も無くしてしまった。店を人に譲って、四国西国から坂東へと巡礼の旅に出た。江戸に入って、前夜は木賃宿に泊まり、浅草の観音さまにお参りした後、商家が並んでいる通りに出た。自分たちがやっていた店のことを思い出し、店々を見ながら歩いて行くと、「誉田屋」の暖簾が掛かっている店がある。

 「呉服屋で同じ名で字まで一緒のお店・・・」と、懐かしそうに二人が店の中を覗いていると、奥に座っていた店の主人(あるじ)が小僧の定吉にに、「あのお二人をちょっとお寄りくださいませと言って、丁寧にお迎えして来い」と申しつける。

 けげんそうな顔で奥へ通された二人に、主人は「お忘れでございますか。久七でございます」、「おぉ、久七かえ、・・・たとへ江戸でも誉田屋の名を継いでくれたのはありがたい」、久七「是非とも女房にお会いください」で、出てきたのが娘のお花。親子三人、嬉し涙の対面となった。

 その晩は積もる話をして両親は綺麗な部屋で、結構な夜具にくるまった。
「ばあさん、わしら夢見てるのやないやろか。昨日に変わる今日の身の上。これも観音さまのご利益やろうな」

「昨夜の宿は汚くてえらいシラミに攻められて寝られませなんだな」

「けど、あれも観音さまのご利益じゃ」


      



シラミ・千手観音
形から千手観音という異称があった。



駿河町越後屋呉服店





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