「蒟蒻(こんにゃく)問答」  

 
★あらすじ 遊びが過ぎて悪い病気を引き受けた八五郎。田舎に引っ込んで、この村のこんにゃく屋で世話になっている。主人の六兵衛から村の空き寺、木蓮寺の和尚になってみないかと言われ、喜んでにわか坊主になる。

 八五郎坊主はすぐに本性を出し、朝から茶碗酒を飲みだす始末。寺男の権助は寺方の符牒を教えたりしている。酒は般若湯、まぐろは赤豆腐、どじょうが踊りっ子、卵が遠めがねまたは御所車、なかに黄味(君)が入っているからだ。鰹節が巻紙、鮑(あわび)が伏せ鐘、栄螺(さざえ)がげん骨、蛸が天蓋だ。

 ある日、門前へ永平寺の諸国行脚の雲水の僧、沙弥托善問答に来る。問答に負けると、から傘一本で寺から追い出されるという。八五郎は大和尚はずっと留守だと断るが帰るまで待つといい、明日もまた訪ねて来るという。

 八五郎と権助は寺の物を売り払い、権助の故郷の信州丹波村に夜逃げをすることにする。道具屋を呼んで売れるものは何でも売っている最中に、こんにゃく屋の六兵衛がやって来る。六兵衛さん、事情を聞くと、自分が大和尚になって問答の相手をすると言い、三人で寺で酒盛りを始める。

 翌朝、なんとか和尚の姿になった六兵衛は、問答で何を聞かれても黙っていると言う。それで相手があきらめて帰らないときは、薪で叩いて、大釜に煮え湯を沸かせておいて、柄杓(ひしゃく)で頭からぶっかけ追い出してしまえと乱暴だ。

 さあ、昨日の雲水の僧がやって来て本堂へ。(ここで、格調高い美文調の本堂の描写が入って)、いざ問答が始まった。
僧 「東海に魚あり。尾も無く頭も無く、中の支骨を絶つ、この義や如何に!」、むろん六兵衛さんの答えはない。

僧 「法華経五字の説法は八遍に閉じ、松風(しょうふう)の二道は松に声ありや、松また風を生むや。有無の二道は禅家悟道にして、いずれが理なるやいずれが非なるや、これ如何に!」、だが何を聞かれても黙ったままの大和尚とは真っ赤な偽物のこんにゃく屋の六兵衛。

 相手の僧は勝手に無言の行と勘違いして、両手の親指と人差し指で自分の胸の前にを作って前へ突き出した。すると六兵衛は両手で大きな輪を作って見せた。すると、「はっはあっ」と、相手の僧は平伏する。

 僧は、今度は10本の指を前に突き出す。六兵衛はそれを見ると5本の指をぐっと突き出した。またまた相手の僧は平伏する。

 次に、僧は3本の指を立て前に突き出す。六兵衛は目の下に指を置き大きく、「あかんべえ」をした。すると相手の僧は恐れ入って平伏し、逃げるように立ち去ろうとする。

 八五郎が僧を引き留めて、問答はどっちが勝ったのか聞くと、僧は自分の負けと言う。何を聞いても黙っているので無言の行と悟り、「大和尚の胸中は」と問うと、「大海のごとし」という答え。「方世界は」と問えば、「五戒で保つ」との仰せ。

 愚僧、及ばずながらもう一問と、「尊の弥陀は」と問えば、「目の下にあり」という答だという。とうてい愚僧のかなう相手ではないので、修行して出直してくると言い、逃げるように退散した。

 本堂へ行くと、こんにゃく屋の六兵衛さんはかんかんに怒っている。

六兵衛 「今のは永平寺の僧なんかじゃねえや、ここいらをうろついている、ただの乞食坊主だ。俺がこんにゃく屋のおやじだとわかったもんだから、てめえの所のこんにゃくはこれっぽっちだと小さい丸をこしらえて、手でけちをつけやがった。だから俺の所のこんにゃくは、こんなに大きいと手を広げてやったんだ。すると今度は、10丁でいくらかと値を聞いてきやがった。500だって言ったら、しみったれ坊主め、300に負けろってえから、あかんべえをしたんだ」



       



古今亭志ん朝の『蒟蒻問答【YouTube】


問答の初めの、「東海(法界)に魚あり・・・」は、謎々のような問題で答えは口という字。次の「法華経五字・・・」とともに、『面壁九年(蒟蒻問答下)』に詳しい。

この噺の作者については、托善正蔵といわれた三代目林家正蔵の作といわれている。しかし岩波文庫の「桃太郎・舌きり雀・花さか爺−日本の昔ばなし」(関敬吾編)には、長野県下伊那郡の民話として「こんにゃく問答」が載っており、小ばなしにも貞享ごろ出た「当世はなしの本」に載っている「ばくちうち長老に成事」という原話がある。(『落語地名事典』より) 



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