「小粒」


 
あらすじ 体が小さいのをいつも友達からからかわれている男。悔しくてたまらず隠居の所へ知恵を借りに行く。隠居「背が小さいのが、どうだって言うんだ。浅草の観音さまを見ろ。わずか一寸八分でも、十八間四面の大きなお堂に入っている。仁王は大きくても門番だ。大男総身に知恵が回りかね、ウドの大木じゃ。箪笥長持ちは枕にならん、牛はでかいがネズミを取らん。太閤さまは、五尺に足りない体でも、加藤だの、福島だのという家来を従えている。一寸法師は小さな体で鬼退治だ。山椒は小粒でもぴりりと辛いぞ」と、言い返してやれとアドバイス。

 喜んだ男はわざわざ友達の家に乗り込む。男は隠居の受け売りで、「浅草の観音さまは・・・一銭八厘・・・、太閤さまは五尺に足りないから相撲取りにはなれねえ・・・、ウドンの・・・、山椒は、山椒は、・・・ぴりりと辛いぞ」、友達「おい、小粒が落ちたぞ」、男「どこへ?」と探す始末だ。

 男はまた隠居の所へ行って、上手く行かなかったと話す。こうなりゃ大きくなるしかないと隠居「芝山の仁王さまに願を掛けて見ろ」と勧められた男。早速、願掛けに行く。

 その夜、男の枕元に仁王尊が立ち、「汝の信心の威徳によって、身の丈を三寸ほど伸ばしてとらせるぞ。夢々疑うことなかれ」とのお告げ。

 目を覚ました男が本当に背が伸びたのかと、ぐいっと足を伸ばしてみると、ふとんから足が三寸ばかりはみ出した。「やれ、ありがたい」と喜んで、お礼参りに行こうとはね起きた男、見ると三布(みの)ぶとんを横に掛けて寝ておりました。


   
        





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