「豆屋」



あらすじ 与太郎が隠居から元手を借り、八百屋の世話で豆売りを始める。
八百屋から物を売る時には何でも掛け値をし、一升十三銭なら二十銭と言った後、だんだんまけていくもんだと教えられる。早速、「えぇ豆屋でござい、豆屋でござい」と、長屋の路地を歩いていると、職人風の男の家から豆屋と呼び止められる。「一升いくらだ」、教わった通り与太郎さん、「二十銭でございます」と掛け値をする。「おい、おっかあ、逃げねえように、心張棒かって薪ざっぽうを一本持って来い。こんな貧乏長屋へ来て、こんな豆を一升二十銭で売ろうとは太ぇ野郎だ」と脅かされ、二銭に値切られた上に、山盛りにさせられ、こぼれたのも拾われ、無理やり「ありがとうござんす」と言わされる羽目になった

 ゲンが悪いと別の場所に移ろうと気を取り直して、「えぇ豆屋でござい、豆屋でござい」とやっていると、前よりもっと怖そうな奴に呼び止められる。「一升いくらだ」、「へえ、二銭で」と始めから弱気だ。すると男は、「おい、おっかあ、逃げねえように、心張棒をかって、まさかりを持って来い。一升二銭なんぞで買っちゃ、仲間うちに面出しができねえ」と言う。二銭よりまだまけろと言うのかと与太郎、「もうただであげます。馬鹿馬鹿しくて商売なんかしちゃあいられねえ」とやけくそだが、「誰がまけろと言った。もっと高くするんだ」、与太郎がびくびくしながら値を上げて「十五銭」に、「ケチなことを言いやがるな」、「二十銭」に、「それっぱかりのはした銭で豆買ったと言われちゃ、仲間うちに・・・・」と、いうわけで、とうとう五十銭まで跳ね上がった。こりゃあいい客と喜んで与太郎さんが、(ます)の上から豆を押さえつけ、大盛りをサービスしようとすると、「やいやい、何をしやがるんだ。商売人は中をふんわりさせて、たくさん盛ったように見せかけるのが当たり前だ。真ん中を少しへこませろ。ぐっと掻き出せ、掻き出しにくくなったら、枡を逆さにして、ひっぱたけ」

与太郎 「親方、枡が空っぽです」

 「俺んとこじゃ、買わねぇんだ」


  
前栽売り(「江戸商売図会」三谷一馬より)



桂文治(10代目)の『豆屋【YouTube】




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