「仕立おろし」


あらすじ 「酒は百薬の長」とも「酒は命を削る(かんな)」ともいうが、酒好きにはいろんな飲み方の癖がある。飲むと陽気になっておかしくもないのに笑い出す笑上戸、飲むと青くなって怒り出す怒り上戸、誰にでもからみ始めるからみ上戸、苦い、まずいと嫌な顔をしながら何杯も飲む薬上戸、飲みだすとだらだらといつまでも飲む後引き上戸、婦人に多いのが踊りの手つきになる踊り上戸など酔態は百態だ。

 泣き上戸、愚痴上戸のが、酒飲み相手に女房の悪口を並べ立てている。「悪い女房を持つと六十年の不作というが、生涯の不作だ。うちの女房は女でなく亭主の命を削る鉋だ。夜中に起きたら木村屋のアンパン見たいにへそを出して寝ていた。おかずだってまともに作れない。この間は牛肉をかつぶしで煮て、バナナをぬか味噌につけた。冷蔵庫を買ったら、煙草、帽子、靴も入れてしまい、夏なのに足に霜焼けができた。針仕事ができるかと聞いたら、何でも縫えるが仕立屋の商売を邪魔するのでやらないだけと言うから、浴衣の生地をもらったので縫って見ろと言うと、生地を縫い合わせ大きな風呂敷をこしらへ、真ん中に鍋のフタを乗せ、出刃包丁で丸く切り抜いて、できたから着て見ろと言うから穴から首を出したら、まるでほうずきの化物だ。あんまり馬鹿馬鹿しいので笑ったら」

女房 「この人はまるで子どもだね。仕立おろしを着てご機嫌だね」


      



雷門助六(八代目)の『仕立ておろし【YouTube】


286




表紙へ 演目表へ 次頁へ
アクセスカウンター