★あらすじ 殿様に築山の赤松を泉水の脇に移せるか聞かれた家老の田中三太夫。赤松は先代のお手植えの松で、万一枯らしては一大事と、出入りの植木屋に聞くことにする。殿様は植木屋に直(じか)に聞くと言う。
三太夫は植木屋の八五郎に無礼がなきよう、上に「お」、下に「奉る」をつけて答えるようにと言い渡す。殿様の前に出た八五郎、「お・・奉る」を連発し、殿様も三太夫も自分も何を行っているのか分からない。
殿様は友達に話すようにざっくばらんに申せと言う。そうなればしめたもの、すらすらとべらんめえ調でまくしたてるが、今度は早すぎて殿様には分からない。要は赤松を移すのは簡単で枯らすことなどないという返事だった。
殿様は安心して喜び、植木屋一同に酒をふるまう。宴たけなわの頃、三太夫に国許(くにもと)から早馬で書状が来たのですぐ戻れとの使いが来た。家老部屋に戻って書状を読むと、「御殿様姉上様御死去」とある。
一大事とあわてて、殿様の元へ戻った三太夫は、「御殿様姉上様御死去」と知らせる。殿様は驚き、「何時ご死去された」と聞く。三太夫はそこまでは読まなかったと部屋に戻り再読だ。
すると「御貴殿姉上様御死去」だった。「これは大失態、切腹して殿にお詫びしよう」と言うのを家来が引き止め、殿に誤りを言上してからでも遅くないと諭され再び殿の御前へ。
人違いと聞いて怒った殿様は三太夫に切腹を命じる。三太夫が腹を切ろうとすると、
殿様 「待て待て三太夫、切腹には及ばん、よう考えたら余に姉はなかった」
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