「松山鏡」


 
あらすじ
 その昔、越後の松山村にはがなかった。この村の正助という親孝行な正直者がお上からほうびをもらうことになった。
村役人の前で正助は、両親の墓参りを毎日欠かさずしたのは当たり前のことで、お上から褒められ、ほうびをもらうことでもないからと、金も田地田畑もいらないという。

困った村役人がどんな無理難題でもかまわないから申してみろ、お上の威光で叶えてくれると言うと、それなら18年前に死んだ父親に会わせてくれと言い出した。これには村役人も弱ったが、名主から父親が正助と瓜二つだったことを聞き、箱に入れたを持って来させた。箱の中を覗いた正助は驚いて喜ぶ。そこには父の顔が。村役人は「子は親に似たるものをぞ亡き人の恋しきときは鏡をぞ見よ」と歌を添えて、鏡の入った箱を正助に下げ渡した。

正助は鏡を大事に家に持ち帰り、けっして人に見せるなと言われたので、納屋の古つづらの中にしまって、毎日そっと行っては鏡を見て、父に朝夕のあいさつをしていた。
これを女房のお光が怪しみ、正助の留守に納屋のつづらを開けてビックリ、そこには不細工な女の顔が。てっきり正助が引っ張り込んだ女と思い、「われ、人の亭主取る面(つら)か!狸のような面しやがって」と泣きながら大騒ぎ。野良仕事から帰った正助の胸倉をつかんで、「さあ、殺せ」の大げんかが始まった。

ちょうど表を通りかかった隣村の尼さんが、二人の間に割って入り事情を聞く。お光は、つづらの中に女子(おなご)を隠していると言い、正助はあれは父つぁまだという。
尼さんは、「ようし、おらがそのあまっこに会ってようくいい聞かせるから」と、納屋に入り鏡を覗き、

尼さん 「ふふふ、お光よ、正さんよ、喧嘩せねえがええよ。おめえらがあんまりえれえ喧嘩したで、中の女ぁ、決まりこと悪いって坊主になった」


      



桂文楽の『松山鏡【YouTube】





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