「目薬」


 
あらすじ 職人の熊さんを患って仕事に出られず米を買う金もなくなって、夫婦そろってさつま芋ばかり食べている。かみさんはおばさんの所で金を借りて角の薬屋で目薬を買って来る。

熊さん 「こりゃ、おめえ粉の薬じゃねえか。どうやって使うんだ?・・・ああ、袋の裏に能書きが書いてがある。ひらがなだから何とか読めそうだ。こ・の・く・す・り・は・み・み・か・き・い・つ・は・い・・・、うん、このくすりはみみかきいっぱい。・・・だめだ次の字が読めねえ。その次は、し・り・へ・つ・け・べ・し・・・なんだいこりゃ、しりへつけべし・・・おい、おっかあ、この字よめるか」

かみさん 「あたしゃ字は読めないよ。読めるくらいならおまいさんのとこなんぞに嫁に来やしないよ」

熊さん 「どっこかで見たような字なんだが・・・ちょっと見てみろよ」

かみさん 「・・・あれっ、あたしもどっかで見たような気がする。・・・ああ、お湯屋さんの入口の戸と、暖簾に書いてある、男湯・女湯”」のって字よ、これ」、なるほどに似ている。

熊さん 「ああ、そうかなるほど、これは女っていう字だ。さすがおめえは女だけのことはあらぁね」

かみさん 「へんなほめ方だねえ」

熊さん 「するとこれは、このくすりは、みみかきいっぱい、しりにつけべし、う、なんだこりゃ。・・・ああ、そういうことか。おい、かかあ、表と裏閉めて心張りかって来い。・・・閉めたらこっちへ来てくるっと着物をまくってケツを出してみな」

かみさん 「まあ、いやだよこんなまっ昼間から、そんなこと」

熊さん 「馬鹿、なにを勘違えしてるんだ。そうやって目薬をつけるのよ」

かみさん 「・・・だって変だよ、目が悪いのはおまえさんだよ。なのになんであたしがお尻をまくんなきゃなんないの?」

熊さん 「だけどここにそう書いてあるんだからしょうがねえだろ」

かみさん 「どうしてもやんなきゃだめかい。変な薬買って来ちゃったよ」、かみさんは亭主の目のためならと渋々と尻をまくった。

熊さん 「おい、耳かきどこにある?」

かみさん 「馬鹿だねえ、そんなことお尻まくる前に言ったらどうなんだよ。まったく」

熊さん 「よしよし、これに一杯だな。・・・でもこんなでけえケツのどこにつけたらいいんだ?・・・」と、撫で回すもんだから、かみさんはくすぐったくてしょうがない。薬もこぼれてしまって今度は山盛りにして再挑戦。

 かみさんは動いちゃいけない、笑っちゃいけないと思うからじっと我慢に我慢だが、つい下腹に力が入り過ぎて、思わず大音響とともに、「ブゥーッ」、芋ばかり食っているからすごい風力で、目薬の粉とともに熊さんの顔を直撃、

熊さん 「ああっ、おっかあ、やるならやると言っとくれよ。もろにくらっちまったじゃねえか。あーあ、方々に薬も散っちまって・・・う、こりゃあ、なるほど、おっかあ、やっぱり薬はこうやってつけるもんだ」


  


        




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