「味噌蔵」  春風亭柳好(四代目)


 
★あらすじ★
 味噌問屋の主人のけち兵衛は、名前のとおり大のけちん棒。
女房くらい無駄なものはないと言いなかなか嫁を取らなかったが、親類の骨折りでやっと嫁を迎える。

そのうちに子どもができ、嫁さんは里で出産すると言い里帰りする。
無事、男の子が生まれたとの知らせで、けち兵衛さんは番頭に火の用心と、もし近所から火事が出たら商売物の味噌で蔵の目塗りをするよう番頭に言いつけ、貞吉に重箱を持たせ、きたない下駄を履いて行くように言い出かける。
出た料理を重箱に詰め、新しい下駄を履いて帰るためと言う。

主人は泊りがけで留守というので、店の者はこれ幸いにと、好きな食べ物を注文する。
帳簿の方は番頭が「どがちゃか、どがちゃか」でごまかすという寸法だ。
「鯛の塩焼き」「ぶりの照り焼き」「天ぷら」「すし」「さしみ」「たこの酢の物」「さつまいも」「味噌田楽」etc、そして酒の大盤振る舞いだ。
田楽は焼きたての物を2,3丁づづ持ってくるように豆腐屋に頼む。

食べて飲んで、酔いが回ってドンチャン騒ぎの真っ最中に、店のことが気がかりなけち兵衛さんが、料理を詰めた重箱を忘れてきた貞吉に小言を言いながら帰ってくる。
店の近くまで来るとこんな夜更けまで騒いでいる家がある。
まさかと思いきや自分の店だ。

あわてふためく番頭をはじめ、店の者を叱りつけ寝かせてしまう。
すると、店の戸を叩く音、横丁の豆腐屋が焼けた田楽を持って来たのだ。

豆腐屋 「焼けてきました、焼けてきたんですがね」

けち兵衛 「どうもご親切に、どちらから焼けてきました」

豆腐屋 「横丁の豆腐屋からです」

けち兵衛 「どれほど焼けてきました」

豆腐屋 「2,3丁です」

けち兵衛 「火足が早いね、どんな様子です」

豆腐屋 「あとからどんどん焼けてきます」

けち兵衛があわてて戸を開けたとたんに田楽の味噌の匂いがプーンと入ってきた。

けち兵衛 「いけない、うちの味噌蔵にも火が入った」


    

      


 ★見聞録★  昭和60年に収録した噺です。最後にけち兵衛さんが豆腐屋が焼けたての田楽を持って来たのを火事の知らせと勘違いして豆腐屋とやり交わす会話が笑わせます。
 「鬼の居ぬ間に洗濯」をした番頭さんはじめ店の者は翌朝どうなったのでしょう。
 柳好はゆっくりと穏やかか口調で、大きなホールよりは寄席小屋向きの芸風でした。渋い低音の語り口が8代目の可楽に似ているような気がします。
 顔はいかめしそうでしたが、とぼけた感じもあり、好きな落語家のひとりでした。もとは魚屋で30代で三代目に入門したそうです。
 他界したのが平成4年ですから、もう14年も経ってしまいました。柳好のような噺家はこれからは現れそうもない気がします。


春風亭柳好(四代目)の『味噌蔵【YouTube】



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