「長屋の花見」

 
★あらすじ
 長屋の連中に大家から呼び出しがかかる。どうせ店賃の催促だろうと戦線恐々、皆にいくつ溜めているかを聞くと、「3年」、「おやじの代から」、中には「1回」と成績がいい店子かと思いきや、「引っ越して来た時、1回払ったきり」だと。さらには「店賃とは何だ」、「そんなもの家主からもらったことがない」という強者(つわもの)もいる。

 店子そろって恐る恐るそろって大家の家へ行き、機先を制し謝ってしまうと、長屋中で上野へ花見に行こうという話で、酒、肴は全部大家持ちという。。ほっとして喜んでは見たものの、まだ油断ができない。案の定、1升ビン3本の酒は番茶を薄めた「お茶け」。かまぼこは大根の薄切り、玉子焼きはたくあん、とこんな調子だ。

 月番が毛せん代わりにムシロをかついで、全員やけ半分で上野のお山へ「花見だ、花見だ」、「夜逃げだ、夜逃げだ」と繰り出した。

 高い方が見晴しがいいのに、上の宴会で花見客が落とす料理が転がって拾いやすいからと擂鉢山の下の枝振りのいい木の下に陣取る。5人くらい首をくくっても大丈夫そうな桜の木を見上げて宴の開始だ。

 少しでいいからというのに、月番に「お茶け」を沢山注がれて怒っているやつ、「予防注射みたいに皆で飲まなければいけない」とか、大根かまぼこをつまんで、「毎日、おつけの身にして、胃の具合が悪い時にはかまぼこおろしが効く、最近は練馬の方でもかまぼこ畑が少なくなった」なんて、一向に盛り上がらない。

 大家は俳句好きの店子に一句どうだと言うと、「長屋中歯をくいしばる花見かな」で、大家もぐっと歯をくいしばり我慢だ。すると、大声で「玉子焼き取ってください」ときて、回りの花見客がこっちを向き、大家はにっこり喜ぶが「しっぽのない所」でがっくり。

 お通夜みたいな「お茶か盛り」に大家は月番に、「お前、酔え」と命令だ。仕方なく、「さぁ酔った」と調子を合わせる月番

大家「ずいぶん酔いが早いな」

月番「酔うのも早いが、醒めるのも早い」

大家「嬉しいな、お前だけ酔ってくれて、吟味した灘の生一本だぞ」

月番「宇治かと思った」、

大家「酔った気分はどうだ」

月番「去年、井戸へ落っこちたときとそっくりだ」

湯呑の中をじっと見て、
月番「大家さん、近々長屋にいいことがありますよ」

大家「どうして」

月番「酒柱が立っている」


    

    

 柳家小さんの『長屋の花見【YouTube】



摺鉢山花見(「絵本江戸土産」広重画)



不忍池



擂鉢山古墳(上野恩賜公園


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