「なめる」
★あらすじ さるお屋敷の今年十八のお嬢さんの乳の下にできたおできが、みるみるうちに大きくなってしまった。医者に診せ、薬を塗ったり飲んだりしたが一向に治る気配はない。ある医者が言うには、「四歳年上の男になめてもらえば治る」。
そこでなめてくれる男を生け捕る作戦に出る。女中を連れ芝居見物に行って、ぴったりの男を探すのだ。ある日、二人の桟敷の後ろに立ち見して、「音羽屋」なんて声を掛けている男がいる。桟敷に上がらせ、酒、料理を食べさせて年を聞くと、ちょうど二十二.。
やっと格好の獲物が掛かったと、男をお嬢さんと女中が住んでいる業平の寮に引き入れる。酒・肴と色仕掛けで男をぐにゃぐにゃにして、女中を隣の部屋に引き下がらせたお嬢さん。肝心なことを切り出す。
恥ずかしそうに「・・・なめて欲しい・・・お乳・・・」、お乳と聞いて男はもうよだれを垂らしている。「お乳の下のおできをなめてください」、おできと聞いて尻込みする男に、ここで逃げられたら今までの苦労が水の泡、おできも治らない。
そこでお嬢さんは男にしな垂れかかり、なめてくれれば夫婦になると言う。大家の婿養子と聞いて色と欲に目がくらんだ男はなめることを承知する。着物をはだけ包帯を取ったお乳の下にはもう一つのお乳のようなでかいおできがどんと居座り、黒ずんだ先端からは悪臭を放っている。
お嬢さんはこれを見てたじろんでいる男の顔をぐいっと引き寄せおできの所へくっつけた。もろにペロペロとなめた男、もう亭主気取り、婿養子にでもなった気分で、「今晩はここに泊まって行く」と言い出した。これを隣の部屋で聞いていた女中は機転を聞かせ、「お嬢様の叔父様が見回りに来た。酒乱で暴れて何をするか分からないから今日のところは帰ってくだされ」。男は、明日も来ると言って慌てて出て行った。
翌朝、男が友達を連れて訪ねて来ると屋敷は空になっている。隣の煙草屋で聞くと、「こんな面白い話はない。朝から笑いどおしだ。お嬢さんのおできを治すために、間抜けな男を引き込んでなめさせたが、また来るというので夜中のうちに引っ越して行った。お嬢さんはこれで治るだろうが、馬鹿な男はおできの毒が回って七日も経たないうちに死んでしまうだろうよ」、これを聞いた男は目を回してひっくり返ってしまった。友達が水をかけたりしてやっと男は気を取り戻した。
友達 「・・・気付けにこの宝丹でもなめろ」
男 「いや、もうなめるのはこりごりだ」
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江戸市村座(安政5年(1858))
★三遊亭圓生の『なめる』【YouTube】
小梅銭座跡(業平一丁目) 《地図》
元文元年(1736)から裏面の上部に小梅村の
「小」の文字が入った「寛永通宝」を鋳造していた。
このあたりには旗本や大商人の寮(別荘)が多かった。
この裏手に志ん生が住んでいた「なめくじ長屋」があった。
宝丹の守田治兵衛商店
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