「庭蟹」


 


あらすじ お宅の番頭洒落(しゃれ)の名人だと聞いた旦那。早速、番頭を呼び洒落てみてくれと頼む。番頭がを出して下さいと言うと、旦那は小僧の定吉踏み台を持って来させようとする。やっと題の意味が分かった旦那はそばにあった「つい立」という題を出した、即座に番頭は「つい立(一日)、二日、三日」だが、旦那は全く反応なし、「三日、四日、五日」ではだめなのかなんて調子だ。次ぎの題は、定吉が五十円で買ってきた「いんげん豆」だ。番頭は軽く、「いんげん(人間)わずか五十円(五十年)」と洒落た。すると旦那は、「わずか五十円とはどういう了見だ。商人(あきんど)は一円たりとも大切にしなければ出世しない」と説教し始める始末だ。

 旦那がを見ると、が這っている。孫が縁日で買って来て逃げ出した蟹らしい。逃げ出したい番頭を引き止め、あれで洒落て見なさいと言う。番頭「にわか(庭蟹)には、洒落られません」、旦那「急ぐことはない、ゆっくり洒落て見なさい」と、取り付く島がない。洒落られないならしょうがないと旦那は今度は、そばの「請求書」を指さし、これで洒落てくれと言う。番頭「そう性急(請求)に言われましても、洒落られません」、旦那は「ちっとも洒落られないで、どこが洒落の名人だ」とお冠りで、番頭はすごすごと店へ戻った。

 二人のやり取りを一部始終を見ていた定吉がクスクス笑っている。定吉が番頭の洒落を詳しく解説したが、旦那の堅い頭には理解不能のようだ。それでも旦那は「番頭にすまないことをした、もう一度、番頭に洒落てもらって誉めよう」と呼びつける。
またかと渋々と旦那の前に出た番頭に、

旦那 「もう一度、洒落てもらって、それを誉めて、それでお終いとしよう」

番頭 「そう仰られてもすぐには洒落が出ません」

旦那 「う〜ん、上手い洒落だ」


 柳家小蝠(四代目)
収録:昭和61年(演芸広場)








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