「蘭方医者」

 
あらすじ 薬を飲んでも腹痛が収まらない。横町にできた蘭方医が、ちょっと変わった治療法で病を治すという評判を聞いて訪れる。

医者 「こっちへお入り。どうしたな」

男 「腹がきりきり痛んでしようがおまへんので・・・」

医者 「そこへ寝てみなはれ・・・うーん、なるほど、こらあ虫やな。お腹に虫がわいとる」

男 「ほんなら虫下しなんか」

医者 「こんな虫ぐらいはすぐに取ってしまえばいいねん。おい横山、そこの自来也印を持っといで」、書生が箱を持って来る。

男 「この中に何が入ってまんねん」

医者 「ガマガエル(蝦蟇)が入っとおる。がじきに虫を取ってくれる。チチンプイプイ・・・」と、変な呪文のような言葉を唱えながら蛙を男の腹の中に入れた。

男 「あれ、すーっと腹の痛みが消えました」

医者 「そうじゃろ、今の蛙が虫を取ってくれたんじゃ」

男 「・・・せ、せ、せ、先生、ちょっとまたおかしな具合に・・・体がこうパタンパタン、こう手が前に出て、お尻が跳び上がりまんのや」

医者 「お前の体に蛙が残っているからじゃ。蛙を取ればいいだけじゃ。おい横山、そこの蛇印を持ってこい。を入れて蛙を食わせてしまうのじゃ」

男 「そんなもの体へ入りまんのか?」

医者 「じっとしていろよ。今蛇を入れるよって、チチンプイプイ・・・・、どや体の跳ぶのが治まったろう」

男 「あぁ、ほんまや、これで跳ぶのが・・・、先生今度は体がこうグニャグニャと左右に曲がりまんのやがなあ」

医者 「そうか、やっぱり蛇が残ったか」

男 「そう、いちいち残されてはかなわんねん、ど、どしたらよろしねん」

医者 「雉(きじ)を体の中に追い込んで蛇を退治さす。動くなよ・・・チチンプイプイ・・・、どうや」

男 「・・・あぁ、クネクネするのは治りましたが・・・・今度は、ほれ、手がこうバタバタ、バタバタなりまんねんけど、雉が残ったんですか?」

医者 「当たった。・・・今度は鳥刺しに捕まえささなきゃしゃあないな」

男 「鳥刺しに・・・そんな無茶な、鳥刺しなんかどないしまんねん」

医者 「いやぁ、これは吾輩が行く」と、をかぶり、長いとりもち竿を持って、男の体の中に飛び込んだ。しばらくして雉を捕まえた先生、体の外へポイッと飛び出して、「どうじゃ、これで片付いたじゃろ」

男 「へへぇ、おおきにありがと・・・片付いたらしいけど・・・お辞儀がでけへん。体がこう突っ張ってしもた。こら、どなんしたらよろしいねん」

医者 「ははぁ、こりゃえらいこっちゃ。お前の体の中へ、とりもち竿の上に笠乗せて忘れて来た。それがこう突っ立って、お前はお辞儀がでけん」

男 「そんな無茶な・・・先生、何とか早いとこ取ってくなはれ」

医者 「いやぁ、こら困った。これはうちではどうにもならん」

男 「何ですねん」

医者「カサ(笠・)がサオ(竿)にかかったら、外科に行てもらわんならん」





 
  


鳥刺し





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