★あらすじ 今年二十五の与太郎さん。自分はおふくろと二人暮らしなのに、兄貴は嫁をもらって子どももできて、楽しそうに暮らしているのが羨ましい。自分も嫁取りをしようとおじさんの所へ相談に来る。
ちょうど麹町の大きなお屋敷から、お嬢さんの婿養子の相手を探す相談を受けていたおじさんは与太郎にこの話を持ちかける。お嬢さんは両親は亡く、屋敷におつきの女中らと暮らしていて、親類縁者もなく莫大な財産があるという。さらにたいそう器量よしで、気立てもいいという話。
いくら与太郎でも、「それなら何で今まで養子が来なかったのか?」と、訝(いぶか)るのは当然至極。おじさんは、「お嬢様にはただ一つ、人には言えないことがある。夜中に首が伸びはじめて行燈の油をなめる・・・」という。
いくら金があって美人でも、”ろくろ首”では与太郎も尻込みする。だが、与太郎「首が伸びるのは夜だけですかい?」、隠居「そうだ、それも真夜中のほんのちょっとの間だけだ」、与太郎「そんなら大丈夫だ。いったん寝たら地震、火事があろうが雷が落ちようが絶対に起きない」で、善は急げで隠居は与太郎を連れてお屋敷に行く。
先方での挨拶が難しいので、与太郎の下帯に毬(まり)の紐を結び付け、隠居が毬を一つ引いたら「左様左様」、二つは「ごもっともごもっとも」、三つで「なかなか」、ということにする。お屋敷ではじめはとんとん拍子に話は進んだが、そのうちに猫が毬にじゃれつき、与太郎は頓珍漢な言葉を連発するハメとなった。それでも縁談は無事まとまって、吉日を選んで婚礼となった。
さて、その夜、普段は寝つきのいい与太郎でも寝床が変わると寝つけない。やっと、ウトウトし始めたら隣に寝ている嫁さん(お嬢さん)の動く気配で目が覚めた。嫁さんの首が伸びて、行燈の油をなめ始めた。びっくりして飛び出した与太郎はおじさんの家へ、「伸びたー!」と駆けこむ。
おじさん 「何だこんな夜更けに・・・馬鹿野郎、首が伸びるのを承知で行ったんじゃねえか」
与太郎 「・・・まさか初日からあんなに伸びるとは・・・、やっぱり家へ帰っておふくろのそばにいたほうが安心だ」
おじさん 「・・・お前のおふくろはこの縁談に大喜びで、うまくおさまってくれればいい、きっと明日はいい便りが聞けると、首を長くして待っているぞ」
与太郎 「えっ、おふくろも首を長くして・・・、それじゃ、家にも帰れねえ」
|