★あらすじ 大店の若旦那の孝太郎は大の道楽者。今夜も遊んで帰ると戸が閉まっている。
戸を叩いて店の若い者たちの名前を呼ぶが、起きているのは口やかましい親父の孝右衛門で、
「夜分ドンドンと戸を叩くのはどなたですか。商人(あきんど)の店は10時限りですから、お買いものでしたら明朝に願います」、「せがれの孝太郎です」
親父 「孝太郎のお友達ですか。あんな道楽者でやくざなせがれは、親類一同相談の上勘当しました、もう帰って来なくともいい、とお言付け願いますよ」ととぼけている。
孝太郎が「行くところがないから死んでしまおうかな」に、親父は「死ぬ死ぬと言って死んだためしがないと、お言付けください」ときた。
孝太郎は「この家を他人に取られるのはいやだから、火をつけて燃やしてしまいます」と大声でおどす。戸の隙間から見ると、マッチを擦っている。本当にやりかねず、近所の手前もあるので親父は六尺棒を持って戸を開けて外に出て、逃げ出した孝太郎を追いかける。
町内を逃げ回り、物陰に隠れて親父をやり過ごした孝太郎が家まで戻ると戸が開いている。これ幸いと中に入って心張棒をかってしまう。そこへ親父が戻って来る。
用心のために番頭が戸を閉めてくれたのだと思って戸を叩くと、中から「夜分ドンドンと戸を叩くのはどなたですか。商人の店は10時限りですから、お買いものでしたら明朝に願います」と孝太郎の声、
親父 「俺だ、俺だ、親父の孝右衛門だ」
孝太郎 「孝右衛門のお友達でございますか。しみったれて金を貯め、しまいには身上(しんしょう)をどんなに大きくするか分かりません。あんな親父は世の中のためになりません。親類一同相談の上、勘当したとお伝えください」
孝右衛門 「そんなにまねがしたければ六尺棒持って追っかけて来い」
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